──東急沿線の未来についても伺いたい。東横線、田園都市線など東急のブランド力は強く、長く憧れの沿線でした。しかし最近の若年層には、都心に近く、かつ地価も家賃も安い下町エリアの人気が高まっている。
高橋:若年層を呼び込めるような街の魅力づくり、活性化に腐心しているところです。沿線価値を再度デザインし直さないと、30年、50年先も持続可能な街にならないという危機感を持っています。
一方で、共稼ぎの30代のご夫婦が沿線の世田谷エリアに住まわれているケースも多い。地価や家賃がリーズナブルな池上線沿線も、都心へのアクセスもいいことで人気が出てきています。
東急線沿線を俯瞰していくと、まだまだポテンシャルはあると思いますし、それぞれの地域に根ざしてより暮らしやすい街づくりを追い求める発想は、東急のDNAでもあります。そこが、今後も東急というブランド力をきちんと維持していく源泉になるはずです。
【プロフィール】たかはし・かずお/1957年、新潟県生まれ。一橋大法学部卒業後、1980年に東京急行電鉄入社。2010年執行役員経営管理室長、常務、専務などを経て、2018年より代表取締役社長(2019年9月に東京急行電鉄株式会社から東急株式会社に社名変更)。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2020年4月17日号