国内

食に対する日仏の意識の違い 日本は様々な分野で緩い状況に

フランスのスーパーではオーガニックを意味する「BIO(ビオ)」の表示が目立つ(写真/AFLO)

 国によって食に関する文化が異なると同時に、食品安全への取り組みにも差異がある。日本では使用が可能となっている食品が、海外では禁止されるというケースも少なくない。

 たとえば、自国の食文化を守るため、国民一人ひとりの意識が高まっているというのがフランス。2020年1月には、学校給食や病院食など集団食の食材を、2年以内に最低でも20%はオーガニックにするという法律が施行されるほど、食品安全や健康に対する意識が高い。

 そして、日本との差は、「農薬」に対する扱いでも顕著だ。専門店ではなく、一般的なスーパーマーケットにもオーガニックの農作物が並ぶフランスでは、農薬を規制する動きが活発なのだ。

 今年1月、世界で最も有名な除草剤「ラウンドアップ」をはじめ、すべての農薬の家庭菜園での使用をフランスは禁じた。その主成分である「グリホサート」に、発がん性や奇形性などの毒性があるとされているからだ。仏マクロン大統領は、2021年までに全面使用禁止にする方針だ。

 しかし、日本はフランスと逆行し、最近、グリホサートの残留基準値を緩和した。内閣府食品安全委員会は「グリホサートに発がん性などの毒性は認められなかった」とし、安倍政権はアメリカの要請を受けて、2017年に小麦をはじめとする穀類のグリホサート残留基準値を緩めた。食品の輸入事情に詳しい東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんはこう説明する。

「農民連食品分析センターの検査によると、日本で売られているほとんどの食パンからグリホサートが検出されています。国産の原料を使った食パンでは検出されなかったので、アメリカからの輸入小麦に残留していたことがわかります」(鈴木さん)

 輸入食品だけでなく、日本独自の農産物でも、フランスとのギャップはある。

 緑茶の栽培に使われている「ネオニコチノイド系農薬」も、2018年からEUでは原則禁止された。ミツバチなどへの被害のほか、人体の神経系にも悪影響があるとして、フランスでは大問題となったのだ。食品ジャーナリストの郡司和夫さんが言う。

「ネオニコチノイド系の残留農薬は、日本で市販されているペットボトルのお茶からも検出されています。東京五輪の際、ヨーロッパの選手や来賓にお茶のペットボトルは出せないという話もあるほどです」

 とはいえ、オーガニック主義のフランスも、まったく輸入をしていないわけではない。なかには、「疑わしきもの」も売られているが、食品表示で消費者が見分けることができる工夫がなされている。フランス在住で、食品問題に詳しいジャーナリストの羽生のり子さんが言う。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン