不安は人をどこまで変えるのか。たとえば、私はアルバイトに出勤するのに秋葉原駅と東京駅の2駅を利用する。街は人がまばらだけど、どっちも密集・密閉・密接だらけ。
その雰囲気は日に日に悪くなる。ちょっと肩が触れたら「チッ」と舌打ちされ、バッグが足に当たったら「キッ」とニラまれる。こんなことが続くと、駅に入っていくとき、緊張感で一瞬、身がすくむんだよね。18才で上京して以来、初めての感覚だ。
「でも、それは知らない人で、その場だけでしょ。夫に家で本気でテレワークなんかやられてごらん。パートから疲れて帰ってドアを開けると、夫の加齢臭とどよ~んとした空気。それで『メシ、何?』と聞かれたら、殺したくなるよ」
そう言うのは都内在住の50代主婦・R子さん。実際、「稼ぎが悪い」となじられ、妻を殴り殺してしまった夫のニュースも流れている。そのR子さん、緊急事態宣言の翌日からパート先の飲食店が1か月の臨時休業になった。50代の夫婦がひとつ屋根の下に24時間。かといって、群馬の実家に帰ろうにも、「“コロナ疎開”する気? 東京から菌を持ってこないでよ」と言われたとか。
それにしても、安倍晋三総理の「緊急事態宣言」よ。いま、日本が危機的な状況であることは、誰でもわかる。だから、「生活の維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないように」というのはごもっとも。でも、「社会機能を維持するために必要な職種を除き、オフィスでの仕事は原則自宅でするように」って…外出がそんなに危険なら、“除かれた職種”の人はどうなるの。感染したら補償する? 仕事の出来高で生活しているフリーランスは、来月の支払いをどうしたらいい?
自分の言葉で国民に呼びかけようという総理の意気込みは伝わってきたけど、内容は高校生の弁論部かよってくらい、ある意味、“感動的”。お金の話をうやむやにしたいから、空虚なきれいごとを言っているようにしか聞こえなかった。
5月6日に緊急事態宣言が解かれたらすべて元通り――なんてことにはならないし、コロナが去った後の方が世の中はもっと大変になる、という声も聞く。
その日に備えて、とにかく笑えることは笑い、よく寝て、食べて、体を動かす。さあ、長期戦になるよ!
※女性セブン2020年4月30日号