記者会見する小池都知事(4月15日=時事通信フォト)

 あるいは、小池都知事は「近所の人が届けてくれた手作りマスク」と明かしています。さりげない一言にたくさんのメッセージが入っている。「近所の人~」というのは、地域社会と日常的なつきあいがあり、やりとりの関係がある、ということを示唆し、名の売れた政治家であろうと上から目線ではなく庶民の目線を理解している、という暗示でしょう。

 また、「手作り」の部分も意味深です。どこに行ってもマスクが買えない。それなら緊急措置として工夫しながら自分たちで作ってみればいい。「466億円」という巨額な金を使ってたった2枚の布マスクを全世帯へ郵送するという「愚策」への、暗黙の批判を感じ取ることもできます。

 小池都知事のつけているマスクの生地には細かい柄や色がさりげなく入っています。それを「おしゃれ」と感じるかどうかは人それぞれの感性によりますが、「誰かに言われてただ着けているのではない自主性」「自分らしさ」をメッセージしているようにも見えます。

 つまり、良いとか悪いという以前に、ビジュアルからどんなメッセージを発信するのかを考えるのが今の政治であり、そうしたセンスが無い人は政治家にむいていないということでしょう。

 一方、全国の知事たちのマスク顔を眺めてみると……鈴木直道北海道知事、吉村大阪知事はマスクに隠れていない瞳から「必死さ」「真摯さ」が伝わってくる。目は口ほどに物を言う、ということです。

 最後に「言葉以外のビジュアルメッセージ」がとてつもない拡散力を持つ例として、この人のことも忘れてはいけません。“PPAP”の音楽に合わせて手洗い動画を発信し、世界中に拡散させたピコ太郎。使われている言葉は「手を洗おう」という実にシンプルで凡庸なもの。でもそこに独自のリズムと踊り、容姿等が加わるといかに発信力が強まるのか、改めて実感しました。

「コロナ疲れに対する対策は?」と聞かれた心理学者は、「言葉そのものだけではなく、ある種冷めた目線で背景を想像してみることもひとつの対処法」と回答していますので、今回それを実践してみました。

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