非常事態にこそ、人間の本当の姿が見えるというもの。人間として日本人として、そして隣人として接してきた人たちに、誰がどのような応じ方をしているのかが視覚化できるようにもなった。ウイルスのおかげで化けの皮がはがれ始めたのは政府であり、私たち国民だ。

 ふだん、水商売で大金を儲けているのだから、それに比べて今回の損害は小さいのではないかと思う向きもあるだろう。だが、メディアに出てくるような派手で華やかな生活を本当に送っている当事者は、ごく一握りだ。誰もがきらびやかに見えるかもしれないが、会社勤めだったら負担してもらえる必要な備品、たとえばドレスやヘアメイクなどについても自腹であるのが普通だ。大半が、実は普通の会社勤めと変わらないか、それより厳しい懐事情である場合が多い。きらびやかな格好は仕事のため、サラリーマンがスーツにネクタイを締めて会社に行くことと同じなのだ。

 それでも、納税も満足にできない人たちへの給付は納得がいかないという人たちがいる。だが、今回の給付の目的は、感染症拡大を防ぐ公衆衛生の問題だ。そのためには、すべての人の生活を安定させることが重要だ。もし、明らかに不利な人が一定数、発生してしまうと、切羽詰まった彼らが生きるために非合法な手段をとりかねない。もしこのことをきっかけに貧富の差が固定化してしまうと、社会の安定、ひいては安全保障上のリスクになる可能性もある。

 目先の金銭の分配を回避することで、より大きなもの、公衆衛生の維持や、社会の安定を手放すことになるのだということを、忘れてはいけない。

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