免疫系の機能が低下している人は死亡リスクが高まるわけだから、そうした人たちを守るためには、ワクチンが開発されるまで人と人との接触を避けるしか方法はない。前出の岡田氏はこういう。
「先ほどの研究結果では、都市封鎖前と封鎖後で『一人の感染者が何人にうつすか』の値である『再生産数』についても算出されています。この数値が1以上であれば感染者数は増え、1以下であれば減っていきます。封鎖前にはこの数字は2.38でしたが、封鎖後は0.98になったという数字が出ています。都市封鎖の効果があることが実証されたわけです」
◆感染拡大の収束は?
そして最後に気になるのが、日本でいつ収束するのか、その時期だ。映画『感染列島』では前述のとおり半年で収束する筋書きだが、新型コロナウイルスの場合はどうなるのか。岡田氏は「5月末」がポイントになるとみる。
「今回の新型コロナウイルスはSARSコロナウイルスと構造がほぼ同じで、兄弟のような近縁関係にあることがわかっています。アジア全体で見ると、新型コロナ感染者数の増加傾向は、2002年に流行したSARSのものとほぼ同じ時間経過をたどっています。2002年のときには4月にピークがダラダラと続き、5月に入って徐々に減っていき、5月末にゼロになりました。
また、ウイルスの研究では湿度と温度を上げていくと、培養細胞の中でウイルスの増殖が止まります。今回の武漢は年間1100ミリもの雨量があるのに12月はほぼゼロという40年ぶりの干ばつでしたし、2012年にアラビア半島で発生し、中東やアジア、欧米に感染が拡大したMERSのときも、世界各地で干ばつが発生しています。日本では6月に梅雨の時期を迎えることも、新型コロナが5月末で収束すると私が予測する理由です」
5月6日に緊急事態宣言の期日を迎えるが、宣言の解除を巡っては政府や専門家会議で議論が続いている。仮に一部で解除されたとしても、岡田氏が収束のタイミングと予想する5月末までにはまだ3週間ある。
「たとえ緊急事態宣言が解除されたとしても、あくまで経済を再開させるための配慮であり、感染リスクがなくなるわけではありません。忘れてならないのは、無症状の病原体保有者がどこにでもいるということ。当分の間、マスクを必ず着用し、家族以外の人との飲食は絶対に避けるべきです」(岡田氏)
遠くの光を見据えて、今は耐えるべき時だ。
●取材・文/岸川貴文(フリーライター)