国内

「無店舗型事業者」は東京都の休業補償の対象外という不条理

同じ仕事でも無店舗型だと認められない?

同じ仕事でも無店舗型だと認められない?

 休業補償について、情報が錯綜し、仕事の現場では混乱が起きている。都道府県によって事情が異なり、ある地方自治体は「東京都のように財政に余裕がない」と休業の補償にあたる金銭を用意出来ないとこぼすほどだ。しかし、その東京都ですら実際の営業自粛に対する補償内容は二転三転、エステやマッサージなど、連絡先としての事務所はかまえても店舗を持たない業態が珍しくなくなっているが、同じサービスを提供しても無店舗型事業者は補償の対象ではないというのだ。いったんは休業補償の対象と言われながら、財政に余裕があると言われている東京都内ですら対象から外されて感染拡大を防ぐことより目の前の生活を確保するために営業を続けざるを得なくなっている実態について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自治体から休業要請を受けた業種の中に「性風俗店」が含まれていたのは周知の通り。ところが、こうした業界で働く人々には休業補償などが支払われないという政府の指針が大バッシングを受け、一転、支払われることになった……など、業界を取り巻く状況は混乱していた。筆者の取材によれば現在、多くの風俗店が自主的な休業状態にあるが、この状況の中で、営業を再開したという業者も存在する。

「休業要請が出ると聞き、4月16日から休業の予定で、店のホームページでも告知を出していました……」

 こう話すのは、都内で派遣型風俗店1店舗を営む堀田大輔さん(仮名・40代)。店で働く女性の中には、客との接触から感染するのを心配する声も上がっており、正式な休業要請、そして休業に対する”協力金”が出るのであればと、店の休業を決めていたと話す。しかし……。

「16日の夕方、同業の知人から”協力金がもらえないらしい”と電話がかかってきました。そんなはずはないと、都のホームページを穴があくほど確認したんです。休業要請が出ている業種だから、当然補償の類はあるのだろうと」(堀田さん)

 実はこの日の午前、堀田さんは都が設置した「緊急事態措置等・感染拡大防止協力金相談センター」に電話し、自身が運営する店の運営形態などを全て伝えた上で、協力金が出る、ということを口頭で確認していた。まさか朝令暮改、やはり風俗関係者には金が支払われない、そう変更があったのか。

「センターのホームページには、確かに休業要請業種として“派遣型風俗店”の記述があったのですが、改めて確認したところ、風俗店でも店舗を持たない店はダメだ、そう言われたんです。いくらなんでもこれはおかしいと思いましたが、出ないなら営業を続けるしかないと」(堀田さん)

 筆者も件のセンターに問い合わせたが、回答は同じく「派遣型風俗店ではあっても、店舗がなければ協力金は支払われない」とのことだった。HPで休業要請が出されていた業種ではないか、そう問うても「無店舗型は対象外」と繰り返すのみ。堀田さんによれば、翌17日に「施設を運営していない場合は対象外」とホームページに追加記載されたというから、業界関係者は落胆よりも「裏切られた」「差別ではないか」という強い怒りを覚えただろう。

 現在、様々な規制によって、店舗型風俗店を新規で開設することは実質不可能となっている。そうした規制のなかでも営業出来る形として、近年爆発的に増えたのが「派遣型風俗店」である。店舗がないからといって違法なのではなく、風営法にのっとった許可を得ている合法な存在だ。堀田さんもきちんと当局に届け出を出し、正当に営業をしている。ここに差異があるとすれば何なのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン