交通事故の被害にあった従業員が働けなくなり、会社に損失(企業損害)が生じた場合、通常は従業員と使用者が経済的に一体であるケース以外は、会社は加害者側に対して損害賠償請求をできないと解されています。この点は副業での事故でも同じでしょう。
事故が従業員の過失による場合でも、私傷病として就業規則に従った休業などの扱いになり、従業員に損害賠償はできません。給与を払わないのですから、特別な場合以外は会社に損害が発生することもありません。また、損害が生じても裁判所は、従業員に重過失などがない限り、使用者の損害賠償を認めないのが普通です。よって副業先との間で、本業に迷惑をかけない等の取り決めがないと、副業先に賠償請求はできません。
ただし、副業先が副業での過労が原因で本業に損害を与えそうな可能性を予見できたのに、従業員に配送を無理強いした結果、事故が起きた場合には、不法行為責任を問える場合もあると思います。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2020年5月22・29日号