〈野生動物とは彼らの流儀で生きている、独立国家のような存在だ〉〈他種の動物相手に「わかり合える」という発想がそもそも、緊密で大きな社会を持った、しかも全てを擬人化して物語を付与しがちなヒトという生物の思い込みにすぎない〉〈実際、どんなに動物が好きだろうが、それはこちらの事情にすぎない〉〈必要なのは「わかり合う」ではなく、まずはお互いの身体感覚で相手との間合いを把握する、つまり「渡り合う」ことであった〉
「例えば、紫外線も見えているカラスの色覚では、ヒトと見ている世界が違うはずです。その違いを素通りするかワクワクするかは、人それぞれですよね。ただ、物事は自分の物差しだけで測りすぎない方がいいですし、人知を超えた存在をありのままに面白がる方が、はるかに楽しく豊かな生き方だと思うのです。
もちろんカラスの場合は現に農業被害も出ていて、“害鳥”ではあります。ですが彼らに悪気はないということは、農家さんもわかっています。むしろ危ないのは『動物は友達だ』みたいな考え方で、カラス側は別に人間のことを好きでも嫌いでもないことだけは、ハッキリ書いておきたかったのです」
本書ではニワトリやその原種のキジ類、またカワセミ、インコといった人気の鳥やカラスの天敵のトビやタカまで、直接的、間接的に人と関わりをもつ鳥類全般を扱う。だが人気という言葉自体、人間本位以外の何物でもない。
◆「今が全て」が徹底しているのも魅力