ジョンヒョクが女心に詳しい恋愛上級者ではないところも胸キュンポイントだ。
「ジョンヒョクは一度も女性とつきあったことのない『母胎ソロ』(母胎から生まれたときからずっとソロという意味の韓国語)です。普段はクールな中隊長だけど女性に対しては決して器用ではなく、セリの過去の恋愛話を聞くと口をとがらせて露骨にスネます。冷徹な軍人と子供っぽさのギャップが視聴者の心をくすぐります」(西森さん)
ジェンダー問題に詳しいジャーナリストの治部れんげさんはジョンヒョクの「母性的なもの」に注目する。
「ジョンヒョクは軍人でイケメンマッチョなので昔ながらの王子様かと思いきや、身を粉にしてお母さんのように他人をケアします。セリのために豆からコーヒーを煎り、手料理をふるまうだけでなく、部下の中隊員にも優しく接する。ルックスだけでなく、人格的に優れているところが彼の最大の魅力です。私は美男美女が惹かれ合うセオリーが苦手で10年以上もラブストーリーを見なかったけれど、本作でジョンヒョクが見せたお母さんのような優しさには、何度も涙腺が決壊しました」
それでいて、ここぞという場面では身を挺してセリを守る。韓国に帰国しようとしたセリの乗った車が敵の一味に狙われた際には、オートバイにまたがって颯爽と現れ、一味と激しい銃撃戦を繰り広げた。その姿は正義のヒーローそのものだった。
「私の友人は“あの場面は、『ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズよりカッコいい!”と興奮していました。まったく同感です(笑い)」(治部さん)
母性を持つジョンヒョクと対照的なのがユン・セリだ。財閥の娘で経営者でもあるセリは、好きな言葉が「ストップ高、高収益、業界1位」というバリバリのキャリアウーマンで、男性の部下から恐れられる恐怖のボスである。
「セリは自立した賢いヒロイン。男が望む女ではなく、女が好きな女です。韓国に戻る計画が頓挫してもメソメソしないし、北朝鮮で銃をつきつけられ誘拐されても、『私を助けたら得します』と交渉する強い女性です」(治部さん)
北朝鮮でいじめられている子供を助けたセリがこう諭すシーンは象徴的だ。