国内

コロナ禍で進行する各種の依存症 違法薬物の流通増とも

外出自粛で住宅街では酒などの空き缶ゴミが通常の倍以上に増えた(時事通信フォト)

外出自粛で住宅街では酒などの空き缶ゴミが通常の倍以上に増えた(時事通信フォト)

 緊急事態宣言の解除がすすめられ、毎日、報道される新型コロナウイルスの新規感染者数も減少している。そのことで、もうすぐ苦しい自粛生活から脱出できると考える人が多いだろうが、この疫病によって傷つけられた人々の心は、すぐに元通りとはいかないようだ。ライターの森鷹久氏が、タバコ、睡眠薬、精神安定剤、はては違法薬物への依存がコロナ禍によって加速している様子をレポートする。

 * * *
「テレワークが続き、ずっと自宅から出られないストレスから、結局またタバコを吸い始めてしまったんですよ。10年前に禁煙して、以降は一本も吸っていなかったのに……」

 苦笑いでこう打ち明けたのは、都内の大手テレビ局勤務のニュースディレクター・野原祐一郎さん(仮名・45才)。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、会社の喫煙所は多くが閉鎖され、それをきっかけに禁煙にチャレンジするという同僚が少なくない中、野原さんは逆戻り。4月中旬、コンビニでなんとなく手にとってしまったタバコは、今では1日半箱ほどを吸ってしまうという。

 都内の通信系企業に勤める堀川達也さん(仮名・30代)は、仕事のリモート化による家ごもりが一ヶ月以上続き、酒量は以前の三倍近くまで増えたと話す。

「仕事が終わった瞬間に缶チューハイを開けてしまう。仕事の時間と家の時間の線引きが曖昧なんで、酒を飲むと仕事が終わった、という気になるからでしょうか……。以前は、飲んでも500ミリリットル缶3~4本だったのが、今では多い時で10本近く飲んでしまう。話し相手もおらず、寝るまでダラダラして。体調は明らかにおかしくなってきていますが、他にストレス解消の方法がない」(堀川さん)

「コロナのせい」といえば責任転嫁に聞こえるかもしれないが、コロナがきっかけで、再び「舞い戻ってしまった」という笑えない状況に追い込まれている人々がいる。都内在住の通信会社勤務の契約社員・伊藤百合奈さん(仮名・30代)は、二十代の頃に陥った睡眠薬依存が、コロナ禍を期に再発した。

「システムエンジニアをしていたのですが、3月ごろから契約社員が解雇されるという噂が飛び交い、4月からはリモートワークになりました。残業もなくなり収入は減るし、このまま職を失ったらどうしようと不安になって、眠れなくなったんです。ゴールデンウィーク前にかつて通っていた心療内科に行き、一週間分の処方箋を四日で飲んでしまいました」(伊藤さん)

 5月いっぱいは「リモート勤務」を命じられているが、それ以降も仕事があるかわからないという不安は日に日に増大化し、伊藤さんに重くのしかかる。そして薬の量も増え続けていると話す。

「多忙だと忘れてしまうのですが、ヒマができるとマイナスなことばかり考えて眠れなくなる。かつて睡眠薬依存になったのは、うまくいかない就職活動が原因でした。せっかく仕事も順調だったのに……。不安定な状態が続くようなら、向精神薬にも頼らざるを得ない。それは避けたいんですが」(伊藤さん)

 大手紙の厚労省担当記者は、都内の一部の病院ではコロナ禍の前後で「依存症」の兆候を示す患者の数が「目に見えて増えている」と話す。特に顕著なのは、再診の患者数だという。

「コロナに対する不安から、眠れない、気分が沈むという一般の方もいますが、もともと依存症にかかっていた人たちの回帰が、一部のクリニックで起きている。医師によれば、ほとんどは軽微な症状ではあるものの、かつて睡眠薬や向精神薬に依存していたような患者さんが、再び訪れてくるパターンが目立つといいます。仕事が減った不安を覚せい剤や大麻など、違法薬物を用いて処理しようとして検挙されたパターンも確認されています。常習者というわけではなく、何年もやめていたのに、です。アルコールの摂りすぎをやめられず、相談してくる患者もじわじわ増えている。全てがコロナのせい、とは断言はできませんが、遠因になっていることは確かです」(大手紙の厚労省担当記者)

関連記事

トピックス

逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン