国内

コロナ禍の飲食店 当事者の数だけ事例があり、悩みがある

緊急事態宣言が解除された5月25日の新宿・歌舞伎町(時事通信フォト)

 ウイルスとの戦いは局面を変えつつある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が飲食店の事情についてレポートする。

 * * *
 ようやく、というべきか否かはわからない。ともあれ5月25日の「緊急事態宣言解除」以降、止めていた息をようやく一息つく、という空気が漂い始めた。

 緊急事態宣言下の都心の人口の増減を「NTTドコモ モバイル空間統計」の「緊急事態宣言前後における全国主要都市の人口変動分析」で見ると銀座や東京駅などの中央区で前年同月比で63~75%減となっていた。例えば銀座を基準とすると、今年の5月18日は前年比で-60.5%だったのが、緊急事態宣言が解除となる25日(宣言解除前の午後3時の測定)では-57.4%、26日-56.9%、27日-54.3%、28日-52.2%と、慎重に、しかしながら着実に人は戻ってきている。

 一般企業でも今週から通常の出勤に戻した会社もあるし、もともと設定されていた期間の5月末をすぎれば、多くの企業や施設、店舗が日常へと舵を切り直すはずだ。人は経済活動なしには生きられない。

 だが飲食店の現場はどうか。緊急事態宣言が解除された25日から29日までの間、何軒かの飲食店に話を聞いた。実は飲食業界では、かなり早いうちから「某与党の偉い人(実名)が20日頃と言っていた」という話をひとつの目安としていた店も多く、この時期からぽつりぽつりと店のシャッターが上がり始めた。

 もっとも29日時点では銀座や大手町などの都心の店には人は戻ってきていない。都心の店主たちは「人は戻りつつあっても、まだ外食をするマインドになっていないのではないか」という。

「自粛要請の範囲内で20時までの営業で店舗営業を続けています。今週(25日以降)、少し人は戻ってきた感じはありますが、まだなかなかビルの上階にまでは上がってきてくださらないですね」(中央区・和食居酒屋)

「うちは緊急事態宣言以降、店を閉めていました。テイクアウトはスタイルや内容によってはグレー業態にもなりますし、気温も上がってきて食中毒も怖い。先週の中頃(20日頃)から開けることにしましたが、いらっしゃるのはご常連の予約客が1日2組程度。ふらりと入店されるお客様はいらっしゃいません」(中央区・イタリア料理店)

「まだ街に人も少ないですし、いま開けてもどれだけお客さんにいらしていただけるか……。役所にも問い合わせたんですが、カラオケもないのに『バー』ついているだけで、『営業まかりならん!』というようなことも言われました。給付金などでかろうじてしのいでいるところです。うちは6月に入ってから開けようと考えています」(中央区・バー)

 一方、山手線のやや外側あたりの「半郊外」とも言うべきドーナッツ状のゾーンには、短縮ながら営業している店も多い。このエリアの店はテイクアウトや短縮営業でしのいでいる。

「平常営業は夜だけですが、要請にしたがって11時から20時まで営業しています。ふだんはやっていないランチ営業をはじめました。日によって波はありますが、近隣の方々がちょこちょこ覗いてくださいますね。ただ緊急事態宣言が解除になっても、そんなに客足は変わらないかな……」(新宿区・ビストロ)

「もともと、ランチ営業もやっている居酒屋だったんですが、いまは昼から夜まで通し営業でテイクアウトのみで営業しています。ふだんはお酒に頼っている部分もあるので、自粛要請期間中は客単価がどうしても厳しいですね。ただ客数はほとんど変わりませんでした。ふだんは来ない、近隣にお住まいだという方が増えました。宣言が解除されてから、客数は少し落ちましたね。出社される方が増えた気がします」(中野区・居酒屋)

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン