◆「瞬間」を生きる2人

 確かに、表面的な主張だけを並べると2人は相容れない。リベラル派が嫌悪する百田と、拍手を送る玉川。右派が讃辞を贈る百田と、非難する玉川。一見すると水と油のような2人をつなぐのが、時代を席巻するポピュリズムだ。ポピュリズムという言葉はよく「大衆迎合」と訳され、日本ではネガティブな記号となっているが、最近の政治学では捉え方が異なる。

 オランダの政治学者、カス・ミュデらの定義が非常に端的に特徴を指し示している。

〈社会が究極的に「汚れなき人民」対「腐敗したエリート」という敵対する二つの同質的な陣営に分かれると考え、政治とは人民の一般意志の表現であるべきだと論じる、中心の薄弱なイデオロギー〉(カス・ミュデ他『ポピュリズム デモクラシーの友と敵』白水社)

 腐敗したエリートに対峙すること、中心の薄弱さ──。そして、大衆を第一に考えることにポピュリズムの本質がある。彼らの主張は、右派であれ、リベラル派であれ、確固たる信念に基づく体系的な思考はなくていい。大事なのは「何かに対峙すること」そのものだ。

 玉川にとっての対峙すべき対象は「官僚」や「時の政権」であり、彼らを批判するための材料さえあれば、すぐさま使って「国民の味方」になる。百田が対峙しているのは朝日新聞を中心とするリベラルメディアやリベラル派文化人という「権威」だ。朝日新聞に立ち向かう自身を評して「反権威主義」と言う。

 彼らに対し、論理的な一貫性がないという批判はまったく意味がない。最初から、そんなものを目指していないからだ。百田も玉川も、大衆に迎合していない。「その時々の自分の気持ち、考え」を正直に発することで大きな権威と対峙する姿、空気を読まずにどんな相手にも物怖じしない「自分」を見せている。この対峙こそが、人々の心を捉えるのだ。私には、彼らが発する一つ一つの言葉に賞賛と批判が集まり社会現象となっていく社会は、人々がポピュリストに魅了されている社会に見える。

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