百田もまた間違いを潔く認める。シリーズ累計100万部超の『日本国紀』(幻冬舎)で、ファクトのミスや似たような表現の記述が相次いで見つかり、重版の度に表現、表記が訂正されたことは記憶に新しい。それを彼にぶつけると「間違いはいくつかありました。恥ずかしいミスもありました。僕の不徳の致すところです。そこは申し訳ないです」と率直に認め、謝るのだ。そして、『日本国紀』は売れ続けていく。
過去は、過去であり変えられないのだから、仕方ない──。ポピュリストは瞬間を生きている。時代の風は、視聴率や部数に変換され、彼らにとって追い風として吹く。この事実とどう向き合うか。本当の課題はここにある。
【プロフィール】いしど・さとる/1984年東京都生まれ。立命館大学法学部卒業。毎日新聞社、BuzzFeed Japanを経て2018年に独立。2019年、「ニューズウィーク日本版」の特集「百田尚樹現象」にて第26回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞を受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』
※週刊ポスト2020年6月12・19日号