営業する飲食店に心ない声が浴びせられることもあった(千葉県八千代市の駄菓子店「まぼろし堂」提供)

◆ボランティアの文化が定着

 イタリアでは医療従事者は差別を受けるどころか、「英雄」として扱われるという。さらに、多くの民間人がボランティアとして病院を支え、医療従事者の手助けをする。人口約6000万人のイタリアでは、550万もの人が、普段からボランティア活動をしているという。

 イタリア在住のライター・田島麻美さんは言う。

「コロナ禍に際しても、70万を超える人がボランティアとして力を貸したそうです。さらに、イタリアでは、国内初の感染者が確認された2月20日が『白衣の日』という記念日として制定されました。犠牲者をしのび、医療従事者やボランティアなど命がけでコロナに立ち向かった人々をたたえる日です」

 イタリアでは国を挙げ、医療の最前線にいる人に感謝を示しているのだ。

 また、公のボランティアだけでなく、市民が自然発生的に助け合いをする例も各地で見られる。田島さんは自宅マンションで「買い出し代行」の張り紙を見たという。

「コロナが流行りだしたとき、“買い出しや薬の受け取りが必要なかたがいたら、代わりに行きます”と書かれた紙が貼られました。それは“お年寄りが買い出しに行けずに困っているのではないか”と思った男性が自発的に貼ったものでした。危機的状況に陥ったときのイタリア人は、躊躇せずに自分が正しいと思ったことを実行するんです」(田島さん)

 ロックダウン後も働き続けるスーパーや薬局の店員に、「ありがとう」と声をかける人が増えたという。子供たちが店員に、お礼の手紙を書く光景も見られたそうだ。

「支払いを済ませたカゴいっぱいの食料品を、あえて持ち帰らずスーパーに置いていく人たちがいました。それは、“食べるのに困っている人がいたら、自由に持って行ってください”と、置かれたもの。イタリアでも、日雇い労働者をはじめ、コロナ禍で収入が激減した人がたくさんいますが、そのような人たちは大いに助けられたことでしょう」(新津さん)

 個人だけではなく企業も一丸となり、国難に立ち向かっている。

「テレビCMは、商品の宣伝が減り“コロナを乗り切ろう”と鼓舞するCMが増えました。医療関係者の奮闘を伝えるドキュメント映像もよく流れています。女性や子供に向けたDV被害者のためのコールセンターのCMも多く、“ひとりじゃないよ”と呼びかけるCMが増えた印象です」(イタリア在住のライター・大平美智子さん)

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