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太田幸司氏「甲子園で活躍したというプライドが邪魔をした」

1969年夏、東北勢として初めて決勝進出(時事通信フォト)

 高校球児にとって、夏の甲子園が中止になったショックは計り知れない。そんな今だからこそ、実際にその座を掴んだ元スター球児に聞いてみた。もし甲子園がなかったら、あなたの人生はどうなっていましたか──。

 元祖・甲子園のアイドルとして「コーちゃん・フィーバー」を巻き起こした太田幸司氏(68)は、プロ志望ではなかった。

「高校入学時点でプロはもちろん、甲子園に行けるとも思ってなかった。あのブームもなく、青森の片田舎でスタンドもないような球場で試合して終わりでしたよ(笑い)」

 だが1969年、松山商(愛媛)との「伝説の延長18回」(写真)を皮切りに人生が一変した。コーちゃん人気は社会現象となってプロ入りも果たしたが、その後は「甲子園の幻影」に悩まされた。

「プロになれたのは甲子園のおかげです。ただ高卒後すぐプロで活躍できるとは思っておらず、本当は2~3年ほど体をみっちり鍛えたかったけど、周囲が時間的な猶予を与えてくれませんでした。自分のなかでも甲子園で活躍したというプライドが邪魔をして、高校時代のピッチングのイメージを捨てきれなかった。

結果が出ず2年目のオフにようやく高校時代の自分をゼロにして、オーバースローからスリークォーターに変え、スライダーとシュートを覚えて、どうしたらプロで通用するか模索するようになりました。3年目に2勝して、そこから波に乗ることができた。

 もっとも甲子園がなかったら、勉強は嫌いじゃなかったので大学まで野球を続けて一般企業に就職したか、地元青森で教員をして高校野球の監督になっていたかもしれません。高校野球で培った協調性や精神力があるのでサラリーマンでも頑張れたと思います」

甲子園の思い出を語る太田幸司氏

【太田幸司:1969年夏、三沢高(青森)で東北勢として戦後初めて決勝進出を果たした。“コーちゃん”の愛称で絶大な人気を誇った】

※週刊ポスト2020年6月12・19日号

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