◆近所の公園の新緑に母の心が動き出した

 さっそく母を散歩に連れ出した。すがすがしい晴天に似合わないマスクをして、駅前は避けて裏の公園を目指した。

 公園では小学生数人が遊び、その親らしき人たちが、スマホ片手に取り巻いていた。

「最近のお父さんは子供と遊んでやるのね。うちのパパは仕事ばっかりだったけど」
「コロナが流行っているから会社に行けないんだよ」
「あら、あの子たち、マスクしているのに縄跳びしてるわ! 大丈夫なのかしら」
「だからコロナでさ…」

 言われてみれば、確かに異様な光景だ。さっきまで口数の少なかった母から、いつもの好奇心がムクムクと湧き上がっているを感じた。

 母の歩幅が広がり、小走りする勢いで駆け寄ったのは、公園の片隅のアヤメの花壇。

「きれいね。いま5月なの?」

 まさしく5月! 美しいアヤメを見て季節に気づくとは。季節など感じる余裕もなかった私は大いに感心した。

 母の小さな発見の数々と心地よい陽気に、私のモヤモヤもすっかり吹き飛んだ。

※女性セブン2020年6月18日号

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