ライフ

認知症女性 久々の散歩で「最近の父親は子供と遊ぶのね」

子供が遊ぶ緑の公園で高齢の母は何を思ったか

 父の急死によって認知症の母(85才)を支えることとなった『女性セブン』のN記者(56才・女性)が、介護の日々を綴る。今回は、久々の散歩でのお話。

 * * *
 命を守るための外出自粛が認知症を一気に悪化させそうで、家族としては非常に頭を抱えていた。緊急事態宣言下のまっただ中ではあったが、ある新緑がキラキラする晴天の日、思い切って母を散歩に連れ出した。

◆命と生活「どちらを取る?」 施設長とのつらいバトル

「今日、モモちゃんを連れて歩いていたら若い不良みたいな男が声をかけてきたのよ」

 母が暗い声で電話をしてきた。久しぶりに聞く話だった。

“モモちゃん”は6年前、いまのサ高住に転居する際に泣く泣く里子に出した愛犬だ。“不良みたいな男”も転居前後の妄想や暴言がひどかった頃、よく母の話に登場した。当時は警察に相談しようか真剣に悩んだこともある。

 不良男の存在は不明だが、ふたたび、母の脳がSOSを出しているのは確かだと思った。外出しない生活になってみて初めて、週3回のデイサービスや通院帰りに寄る書店やカフェでのひとときが、いかに大事だったかがわかる。

 母のデイサービスは、緊急事態宣言後、ケアマネジャーやサ高住の施設長にすすめられて休止していた。しかし、認知症の母にとっては代償も大きかった。

 大型連休直前、電話のことを話してデイサービス再開を相談したが、世間の危機感は最高潮。施設長も頑なだった。

「お気持ち、すごくよくわかります。でも万が一感染すると、もっとつらいことになる」

 私も必死に母の窮状を訴えたが、話は堂々巡り。だが、施設長も多くの認知症の高齢者をケアしている人なのだ。マスクの上の眉間のしわが、彼女のつらい心の内を物語っている。施設長の反対を押し切ってまでデイサービスを再開する勇気はなかった。

 モヤモヤを抱えて連休は過ぎた。休み明け早々、薬を処方してもらうため、母に代わって認知症専門医を受診。

 少しは私の立場をわかってくれる人だ。堰を切ったようにこれまでの経緯を話した。

「うーん…デイサービスの再開は、ケアマネジャーさんたちと相談した方がいいですね。とはいえ、確かに認知症の人には厳しい状況。散歩くらいはした方がいいけれど、感染には充分に気をつけてね」

 それを聞いて、目の前に光が見えた気がした。

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン