ビジネス

駅ビルにも「減築」の波 倉敷駅は8階建てから3階建てへ

減築後した現在の倉敷駅

減築後した現在の倉敷駅

 大は小を兼ねるとはいうが、大きいものを実際に小さくするのは難しい。だが近ごろは、大きなものを実際に小さくして、使い勝手をよくする試みが建築分野で盛んに行われている。もっともよく見られるのが、子供が独立して人数が減った世帯にあわせて行うマイホームのリフォームだ。人口減少時代に入った日本では、公共の建物にも減築が求められている。ライターの小川裕夫氏が、駅ビル減築についてリポートする。

 * * *
 6月6日、東京メトロ日比谷線の霞ヶ関駅と神谷町駅の間に虎ノ門ヒルズ駅が新規開業した。高輪ゲートウェイ駅ほどの話題性はないものの、虎ノ門ヒルズ駅が周辺の大規模開発プロジェクトと連動した動きであるために、東京の都市改造の目玉であることは間違いない。虎ノ門ヒルズ駅の一帯は、駅開業後も森ビルや東京都などによって開発が続く。虎ノ門一帯は、今後の数年間で大きく変貌する予想図が描かれている。

 2014年に開業した虎ノ門ヒルズは、森ビルが総力を結集し開発を担当した。東京都心部に大規模開発が集中する理由は、なによりも需要があるからだ。東京五輪は延期が決まったが、それまでは政財界が五輪特需を期待していた。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって五輪は延期。東京改造およびそれに伴う経済波及効果のシミュレーションに狂いは生じたが、それでも東京都の人口は2025年まで増加する予測が立てられている。それらを見込み、特に東京都心部の開発案件は今後も目白押しだ。

 他方、地方都市に目を転じると東京のように活発な開発は少ない。2012年に安倍政権が発足した当初から“地方創生”が叫ばれていたように、地方の衰退はリーマンショック以降に顕著になった。経済の停滞や人口減少により、地方都市は人口減少が加速する。そのため、住む人がいなくなった家屋がそのまま空き家として放置されることも珍しくない。

 また、空き家まではいかなくても、子供が独立して高齢夫婦だけで生活している。そんな世帯も増えている。高齢夫婦が住む家では、かつての子ども部屋が手入れもされずに物置と化している。こうした手入れが行き届かない家は傷みが早い。ライフスタイルが変化したために、近年は過分に広い家を小さくリフォームする”減築”という新潮流が生まれた。

 そして、減築という新たなトレンドは個人住宅だけではなく、商業施設や駅といった公共施設にも押し寄せる。2015年、岡山県倉敷市の玄関だった倉敷駅はそれまで8階建てだった駅ビルを減築。街のランドマークだった駅ビルは、コンパクトな駅舎へと姿を変えた。

「倉敷駅は市の玄関ですから、減築で街の賑わいが減退することが予想できます。市としては駅ビルの減築は避けたいところですが、駅ビルは市の所有物件ではありません。駅ビルが減築してしまうのは残念ですが、市が止める権限はありません」と口数少なめに話すのは、倉敷市建設局鉄道高架化推進室の担当者だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン