◆不祥事防止チェックリストの驚くべき中身
もちろん、こうした由々しき事態を前に各自治体の教育委員会などが手をこまねいているわけではない。
近年、不祥事が相次いでいる埼玉県では、平成31年3月に「教職員の皆さんへ 教育長緊急メッセージ」を公表。教育長は「県民の皆様の信頼を失い続けているこの状況は、埼玉教育にとって非常事態です」と指摘し、「教職員の不祥事は無くさなければいけません。そのためには、教職員の皆さん全員の理解と協力が必要です」と訴えた。
その後、令和元年11月には「わいせつ行為等根絶 行動指針」を作成。その中で(1)児童・生徒と絶対に交際してはいけません(2)電子メールやSNSを使った児童・生徒との私的な連絡は、絶対に行ってはいけません──などと戒めている。
子ども向けのメッセージではない。大人である教職員向けのメッセージである。こうした取り組みにもかかわらず、今年3月にはSNSを使用した3人の教諭による未成年相手のわいせつ処分が明らかになった。馬耳東風か。
神奈川県教育員会の不祥事防止リーフレット「築き上げた信頼が一瞬で ~50代の教員のあなたへ~」(平成30年7月作成、20代向けもある)は、実際に起こった不祥事(生徒へのわいせつ行為で懲戒免職となり、教員免許が失効した50代の高校教諭)を参考にしたストーリーを紹介し、「あなたならどうするか考えてみましょう」と呼びかけ、最後に「日常点検チェックリスト~不祥事防止のための30項目」が記載されている。わいせつ・セクハラ関連は10項目で、署名欄まである。
チェックリストの内容はたとえば、こんな感じだ。
・公務上の必要もなく、児童・生徒の写真や動画を撮影していない。
・児童・生徒とSNSでやり取りすることは絶対禁止されていることを知っている。
・児童・生徒の方や髪・背中などを触ったり、必要以上に身体や顔を近づけたりしていない。
現場の教員たちはこのチェックリストに記入し、学校(教育委員会)に提出したのだろうか。
50代といえば多くは管理職ではないだろうか。校長、教頭も含まれているだろう。そんな教育者に向けたメッセージ、チェックリストを見るだけで、やりきれなくなってしまう。そこまで教育現場は劣化しているというのだろうか。
もちろん、こうしたわいせつ不祥事で処分される教職員は全体からすればごくごく一部に過ぎない。平成30年の処分者の割合は全体の0.03%だから1万人に3人でしかない。残り9997人の教職員の方々にとっては迷惑千万な話だろう。
とはいえ、生徒向けとしか思えないような行動指針やチェックリストが存在するという事実が、いまの教育界の現状を物語っているのも事実である。ようやく学校が再開されたばかり。今年こそはこうした不祥事が一掃されることを願ってやまない。