国内

コロナで窮した詐欺師たち 空き巣や強盗に転じるケースも

特殊詐欺被害の防止を訴えるステッカーを貼ったマスク(警察庁提供、時事通信フォト)

特殊詐欺被害の防止を訴えるステッカーを貼ったマスク(警察庁提供、時事通信フォト)

 雀百まで踊り忘れずというように、いったん覚えた悪癖は年を取っても改めづらいと言われる。そのことわざどおり、同じ容疑で繰り返し逮捕される詐欺師は少なくないが、結婚詐欺、投資詐欺など得意分野のなかで繰り返すのが特徴でもある。騙す商材も農作物、金券、家電など得意ジャンルにこだわり続ける、奇妙な職人気質が見られていた。ところが、最近は詐欺のボーダーレス化がすすみ、同時に凶悪犯罪へ転じるケースが増えてきている。ライターの森鷹久氏が、詐欺師や詐欺グループの変質についてレポートする。

 * * *
 人気のゲーム機「ニンテンドースイッチ」の買い占めを企む「転売ヤー」と呼ばれる人たちについて以前取材し、記事を書いたことがあった。しかし詐欺師たちはさらにその「先」へ進んでいたのかもしれない。そう思わせるある事件について、大手紙の社会部記者が解説する。

「SNS上に、ニンテンドースイッチが購入できます、などと書き込み、返信してきた男性から現金をだまし取ったとして男が逮捕されました。男は以前、入手困難なライブなどのチケットが購入できるといって同じ手法で金をだまし取っていたようですが、コロナ禍でライブは行われていない。そのため、巣篭もり需要を見据え、詐欺に使うネタを人気のゲーム機に切り替えたようです」(大手紙社会部記者)

 ニンテンドースイッチなどの人気ゲーム機は、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための自粛により価格が急騰。転売ヤーたちによって買い占められたゲーム機が、定価の1.5倍から2倍程度で取引される事例も少なくない。少し前までは品薄だった「マスク転売」と同様、社会問題とも言われている。

 詐欺師というのは慣れた商材を扱い続けるもので、客層が異なるものにはあまり手を出さないのが通例だと言われてきた。チケット詐欺は、実は「被害者が泣き寝入りしやすい」と言われており、その証拠ではないが、女子大生や主婦といった犯罪に無縁な人たちがチケット詐欺によって逮捕されるという事案も頻発している。チケットのようにゲーム機で詐欺をやると「なぜか」即通報された、というのが今回の事例だ。扱う物品について、ある程度の知識を蓄えておく必要があるし、その物品を欲している人たちの年齢や属性を把握し、摘発リスクも考えておかなければ、詐欺は成功しないのである。

 ところが現在の彼らは、「コロナ禍」に乗じて活動分野を広げざるを得なくなっている。奇妙な言い方だが「業務」の転換を企図しているというのだ。

 コロナ禍以降、スマホやパソコンに送られてくる「迷惑メール」が増えたと感じる読者も少なくないのではないか。これも詐欺師たちの「業務の転換」によるものだと説明してくれたのは、かつて特殊詐欺集団に属していた経験のある、東京都内の元暴力団員G氏(40代)。

「いわゆる詐欺電話のかけ子たちの仕事が無くなった。社会が動いていないこともあり、役所や警察のなりすまし電話をしても辻褄が合わなくなるからです。在宅勤務が増え、皆が外出を控えるなかで、得意先へ届ける書類を無くしたとか交通事故にあったなんて話は信用されない。だったら他の仕事をさせればと思うかもしれないが、今ではかけ子の多くは摘発を恐れ、日本の司法当局の力が及びにくい海外にいる場合が多い。他にやらせる仕事もないから適当な迷惑メールを送りつけ、引っかかる人を待っている。電話と比較すると雑な方法で、成功率は低いはずです」(G氏)

関連記事

トピックス

真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン