しかし、私はもうひとつ意味があると思っている。『必殺』の看板は、1972年にスタートした『必殺仕掛人』から始まり、シリーズの顔となった中村主水(藤田まこと)が初登場した『必殺仕置人』など脈々続いてきたものだ。しかし、近年は時代劇が減少し、京都の『必殺』撮影現場や技術継承が危ぶまれているのも事実。このシリーズに出演した大物たちには、時代劇を守りたいという気持ちがあると思うし、実際、取材でそうした声をよく聞く。
現代の事件や世相、流行を取り入れるのも『必殺仕事人』の伝統。80年代には、窓際族、いじめ、花粉症、悪徳金融などもネタにしている。今年の「親だまし」は「オレオレ詐欺」で、「グレ者」は「半グレ」。「2020」の時代の記録ともなる。
今年没後10年となる藤田さんは「仕事人は幸せになっちゃいけない。中村主水は、どこかの側溝で人知れず冷たくなっているような最期が似合う」とよく語っていた。必殺シリーズには、パロディ的な面白さとともに、冷たく暗い面もある。そこが真髄なのだ。世相だけでなく、大物キャスト殺しの歴史も刻む令和の仕事人たちの「仕事ぶり」を今年もしっかり確認しなくちゃ。