国内

放送禁止歌『酋長の娘』から考える表現の不自由問題

かつてのマーシャル諸島(1946年。GRANGER/時事)

 放送禁止とされている言葉や歌がある。放送禁止といっても法律ではなく、あくまで自主規制なのだが、なぜその言葉や歌が禁じられているのか? 理由が解説されることはあまりない。評論家の呉智英氏が、放送禁止歌『酋長の娘』から表現の不自由問題と「ラバさん」問題を考えた。

 * * *
 コロナ禍も一段落。第二波第三波への懸念はあるものの、人々の顔にも落ち着きの色が見られる。私もコロナテーマから一時離れ、ゆるネタを扱ってみよう。

 六月三日NHKラジオのニュースの最後に訂正があった。

「先程のニュースの中で、マーシャル群島と申し上げましたがマーシャル諸島の誤りでした。訂正いたします」

 えっ、マーシャル群島って差別語だったのか。驚いて調べてみると、そうではなかった。外務省の定めた正式国名が「マーシャル諸島共和国」だからである。戦前の委任統治期は「マーシャル群島」であった。「ローマ法王」が「ローマ教皇」に変わったようなもので、だからといってA・ジイド『法王庁の抜け穴』が絶版になるというものではない。これと同じなのである。

 私が「マーシャル群島」も差別語かと早合点したのは、この言葉が放送禁止歌『酋長の娘』の中に出てくるからである。

 この歌については、三年前にも本欄で少しだけ触れたが(『日本衆愚社会』所収)、「酋長」だの「色は黒いが南洋じゃ美人」だの「明日は嬉しい首の祭」だの、アブナイ歌詞が頻出する。そのため現在は言葉を改竄しなければ歌えない。宗教弾圧下で隠れキリシタンが信仰を守るためにマリア像を観音像に作り変えるようなものだ。

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見なえい恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン