「テイクアウトも駄目ね。ランチのお弁当とかそれなりに売れるけど、それじゃ今までみたいな収入には程遠いし、お酒飲んでもらわなきゃ商売にはならないわ」
これは歌舞伎町などでも聞いた。テイクアウトはあくまでしのぎでしかない。夜の店はお酒を飲んでもらわなければ利益は出ない。
「結局、何もかもうまくいかないから、女の子にも休んでもらって私ひとりでやってるの。若い子がいたほうがいいんだけど、お客が来ないんじゃね」
時給を払うくらいならということだろうが、やはり若い子はいたほうがいい。ママだけでは実際お客が入っていないのだから。
「でもソーシャルディスタンスにはなってるわよね。ガラガラだもの」
そう言って力なく笑うママ、かつては笑いも絶えずにぎやかで、人気のお店だったのだろう。しかし風評被害の果てにお客は来ないまま。
「もちろん助成金も申請したわよ。貰えるものは貰わなきゃね。でもいつまで持つか……昼カラも考えてたのに、北海道のアレのおかげで無理になっちゃった」
寂しそうなママ、小規模事業者持続化補助金くらいではどうにもならないのだろう。田舎で家賃が安いとはいえ、元々がそんなに大儲けというわけでもない。それでもお店はママの生きがいだ。
「ほんとコロナが憎いわ。どうにもならないことってあるのね」
ママの人生を詳しくは知らないし聞くなと言われている。しかし日本中にママのようにコロナによって人生を狂わされた人がいることは知っている。
◆北海道のスナックの気持ちはわかる
「もうちょっとがんばってみるけど、辞める時はきっぱり辞めるつもりよ」
最初は威勢のいいママだと思っていたが、話し込んでいるうち落ち込むばかりとなってしまった。正直、親しいわけでもない赤の他人の私が出来ることはない。幸いにして借金とか、背負うものはないとのことなので再起の支障はないだろう。もちろん、このまま店を続けられるのが一番なのだが。
「コロナでこの辺りの自営も不景気だから、それも店に来なくなっちゃった理由よね。家飲みってやつね」
自分は大丈夫だと思っていても、真綿で首を絞めるように不景気の波は押し寄せる。疫病のような区切りのつかない大禍はとくにそうだ。そして私たちはそれを経験したことがない。これからどうなるか、いまだに罹患者の数が報道される日々、今回は茨城県の話だが、都知事選が終わったら、再び何らかの自粛アクションが起こされるかもしれない。そしてそれは間違いなく首都圏、この茨城にも波及する。
「でもね、北海道のスナックの気持ちはわかるのよ。お客さんが来るなら店を開けたくなるもんだし、お客さんに楽しんでもらおうって、昼飲みとか昼カラとか、要望には応えてあげたくなっちゃうのよ」