芸能

柳家花緑 カメラ目線で語りかけるテレビ慣れした演者の魅力

柳家花緑の魅力とは?(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、オンラインで視聴した「第8回文蔵組落語会」で聴いた柳家花緑の『中村仲蔵』についてお届けする。

 * * *
 5月の1か月間で僕は45のオンライン配信落語会を視聴した。観た落語の数は117席で、リアルな落語会と寄席に毎日足を運んでいた頃と遜色ない高座数だ。

 好きな演者が出る会だけを選んでいるので楽しいものばかりだったが、中でも嬉しかったのは柳家花緑の『中村仲蔵』が久々に聴けたこと。5月11日の「第8回文蔵組落語会」で演じたものだ。花緑の『中村仲蔵』は、歌舞伎に詳しくない初心者にもわかりやすいよう地の語りに工夫を凝らして丁寧に説明するのが特徴のひとつだが、特に今回の配信ではカメラ目線で視聴者に語りかける親しみやすい語り口に「テレビ慣れしている花緑だからこそ」という魅力を感じた。オンライン落語会との相性が抜群に良い演者だ。

 門閥のない初代中村仲蔵が四代目市川團十郎に見出されて出世するこの噺、花緑の演じる型は五代目圓楽系だが、随所に独自の演出を加えている。特に女房の果たす役割の大きさが他の演者よりも顕著だ。名題になって初めてもらった役が『忠臣蔵』五段目の「斧定九郎」一役である理由を、女房は周囲のやっかみを避けるために團十郎がわざとやったことだと解釈し、仲蔵にこう言う。

「團十郎親方の鶴の一声で出世したお前さんがいい役をもらったら周りはどう思う? でもこの役なら誰も文句は言わない。それにお前さんは気に入らない役でも必ず何か工夫してきたでしょう? 親方もそれを知ってるから、『あいつならきっといい五段目を創ってくれる』って信じてくれたんだと思う。今こそ親方の恩に報いるときじゃないの?」

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン
モデルで女優のKoki,
《9頭身のラインがクッキリ》Koki,が撮影打ち上げの夜にタイトジーンズで“名残惜しげなハグ”…2027年公開の映画ではラウールと共演
NEWSポストセブン
前回は歓喜の中心にいた3人だが…
《2026年WBCで連覇を目指す侍ジャパン》山本由伸も佐々木朗希も大谷翔平も投げられない? 激闘を制したドジャースの日本人トリオに立ちはだかるいくつもの壁
週刊ポスト
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段どおりの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン