国内

コロナで東京を怖れる地方の人々 報道を通じ醸成される空気

連日の東京都知事会見が報道され新型コロナウイルスのイメージを強めているのか(時事通信フォト)

連日の東京都知事会見が報道され新型コロナウイルスのイメージを強めているのか(時事通信フォト)

 東京都の新型コロナウイルス新規感染者が連日200人を突破した。近隣の県も数値が上昇しており、埼玉県知事が「都内での飲食や、繁華街への外出自粛」を求め、「東京由来の疑い」のものが半数以上と話したことが話題になった。少し前、テレビの情報番組でも話題になったが、東京やそこで働き、暮らしていることを過剰に警戒される現象がじわりと広がっている。これも新しい生活様式のひとつなのかもしれないが、衝撃の体験に直面させられた地方出身者の苦悩について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
「もうそろそろいいだろうと思い、実家と弟に連絡しました。特に弟一家には、半年前に子供が生まれたばかり。お祝いもしていなかったので……」

 東京都在住の会社員・坂下悠紀さん(仮名・30代)は、緊急事態宣言明けの6月上旬、九州・大分県某市にある実家と、その近くに住む弟の家を訪れようとしていた。「県またぎ」の移動が解禁され、不要不急といえばそうかもしれないが、実に2年ぶりの親子の、そして兄弟の再開……のはずだった。

「親は久しぶりねえ、と歓迎でしたが、弟は違った。兄貴の俺がコロナだったらどうする、子供たちや実家、地域にも迷惑がかかると……。差別ではないとわかっていますが、弟にそう指摘され愕然としました。悲しかったです。落ち着いたらまた、と弟は言いますが、すでに落ち着いてるんじゃないのか? またとはいつだ? と思います」(坂下さん)

 筆者も九州の地元に暮らす友人から「お前が生活している東京はコロナだらけだろう」と、ズバリ言われている。冗談半分であることは理解しつつ当然良い気分はしない。似たようなことは、各地で起きている。

 少し前には、いまだ感染者ゼロの岩手県で、県外からの転入生に2週間の登校自粛を求めていたことが明るみに出た。この要求は文部科学省から、一律に登校自粛を求めるのは「適切ではない」と指摘され、すでに登校自粛要請は解除している。

 新型コロナウイルスについては、営業する店へ非難の電話や貼り紙、感染者が多い地域からの移動を車のナンバーで勝手に取締り、揶揄も込めて呼ばれる「マスク警察」など、一部の人たちの言動がたびたび問題になってきた。最近では、「東京を怖れる」極端な言動が目立ってきた。

 新型コロナウイルス感染の可能性については、場所よりも、どんな生活を送っているかのほうがリスクを高めていると言われる。換気があまりされず大きな声を出す場面、つまりお酒を伴う会食や接待といった環境だ。だから外食を控え、在宅勤務や時差通勤を続ける都内在住者に対して「東京都で暮らしているから危険」と断じるのは安易だろう。だが、毎日、ニュースで「都内の新規感染者が100人超」などと繰り返されると、東京そのもの、都会そのものを怖れる気持ちがわいてくる。そして、遠い地域で暮らす人ほど困難が起きている地域を広くとらえ、なぜか皆、自分の周囲だけは「安全」と考えているようだ。

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン