国際情報

インドのコロナ深刻化は「民主主義の弱点」 池上彰氏の分析

インドの発展を池上氏はどう考える

 新型コロナウイルスの感染拡大で、世界の景色はすっかり変わった。国により感染者数や死亡者の数にも大きな違いが出ているなかで、ジャーナリストの池上彰氏は「こういう時こそ、その国の民主主義の度合いや日頃の医療体制の優劣がはっきり出てきます」と指摘する。

 * * *
 新型コロナウイルスについて、独裁的な力で都市を封鎖して感染者数を抑え込む中国のような国もあれば、対策が遅れ、貧富の格差から人種によって死亡率に差が出たアメリカのような国もあります。

 中国に関していえば、感染拡大を防ぐためには国民の行動にある程度の規制をかける必要性は理解できても、武漢という、人口規模で東京都に匹敵する大都市をいきなり封鎖してしまうという手法には嫌悪感を抱く人も多いことでしょう。

 その中国と何かにつけて比較されるのがインドです。私が6月30日に上梓した『池上彰の世界の見方 インド』で詳述していますが、13億人をはるかに超える人口を抱えたインドは、人口増加率を見ると10年以内に中国を追い抜く勢いです。しかし、感染防止の観点からいうと、中国より立ち遅れ、感染者数は爆発的に増えてしまいました。

 インドは「世界最大の民主主義国」と言われます。しかしそれゆえに中国のような強権的な手法はとれませんでした。今、感染拡大対策が後手に回ったのではないかと批判されています。これは民主主義の弱点かも知れません。だからといって中国を見習え、とはならないでしょう。民主主義とは何か。考え込んだ人もいるのではないでしょうか。

 それと共に明らかになったのは、インドの貧富の差です。今回は、人口が密集しているスラム街で感染者が拡大しています。衛生状態も、けっして良好とはいえないインドの弱点が露呈しました。

 インドでは家にトイレがなかったり、学校に女子トイレがなかったりという状態が続いてきました。2015年にユニセフが行った調査では、13億を優に超えるインドの人口のうち、5億人以上が田畑など野外で用を足していました。そこでインドのモディ政権は2014年に「野外排せつゼロ宣言」を行って5年がかりでトイレの設置を進めます。2019年にはトイレ普及運動の達成を宣言しました。ただ、一定の成果はもちろんあったと思いますが、専門家からは、まだ数百万人単位の人々がトイレなしで生活していることや、古くからの習慣のせいで新しく設置されたトイレが使用されていないことなどが指摘されています。こういう背景もコロナウイルス感染拡大の一因になったと思われます。

 インドといえば「カースト制度」を思い浮かべる方もいるでしょう。カースト制度についての詳しい内容は、前出の『池上彰の世界の見方 インド』を読んでいただくとして、実はカースト制度は感染症と関係があるという説があることを、知りました。

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
「埼玉を日本一の『うどん県』にする会」の会長である永谷晶久さん
《都道府県魅力度ランキングで最下位の悲報!》「埼玉には『うどん』がある」「埼玉のうどんの最大の魅力は、多様性」と“埼玉を日本一の「うどん県」にする会”の会長が断言
NEWSポストセブン
受賞者のうち、一際注目を集めたのがシドニー・スウィーニー(インスタグラムより)
「使用済みのお風呂の水を使った商品を販売」アメリカ人気若手女優(28)、レッドカーペットで“丸出し姿”に賛否集まる 「汚い男子たち」に呼びかける広告で注目
NEWSポストセブン
新関脇・安青錦にインタビュー
【独占告白】ウクライナ出身の新関脇・安青錦、大関昇進に意欲満々「三賞では満足はしていない。全部勝てば優勝できる」 若隆景の取り口を参考にさらなる高みへ
週刊ポスト
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
《出所後の“激痩せ姿”を目撃》芸能活動再開の俳優・新井浩文、仮出所後に明かした“復帰への覚悟”「ウチも性格上、ぱぁーっと言いたいタイプなんですけど」
NEWSポストセブン
”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン