Netflixが制作費を出資してオリジナルの韓国ドラマを制作する事例も増えている。15~16世紀の朝鮮王朝を舞台にしたゾンビドラマ『キングダム』は韓国でも大ヒットを記録し、その人気は欧米にも波及。ストーリーだけでなく劇中の衣装や小物にも興味を持つファンが急増し、米ニューヨーク・タイムズが発表した「2019年ベストインターナショナルドラマ」にも選ばれるほど話題になった。
『キングダム』の成功以降、Netflixは『初恋は初めてなので』、『恋するアプリ Love Alarm』、『愛しのホロ』と、立て続けにドラマを制作。2020年にも8本のオリジナルドラマを制作する予定だ。その中でも1話あたり2億円以上の制作費を費やしたホラードラマ『Sweet Home』は韓国内で今最も期待されている。
こうした流れを受けて、韓国のドラマ制作会社もNetflixを無視できなくなっている。世界的な人気に加え、韓国ドラマの制作費が飛躍的に増えているからだ。韓国テレビ局のドラマ制作費は、高くても1話あたり4500万円前後なのに対し、『キングダム』シーズン1の制作費は1話あたり2億円前後と約5倍。テレビ局の予算では制作出来そうにない企画でも、地上波放送終了後にインターネット配信を独占させるという条件でNetflixに持ち込めば、同社が大きく出資してくれるのだ。
Netflixにとっても、今や韓国ドラマは同社の収益を支える重要な存在だ。Netflixは、『愛の不時着』を制作した韓国の制作会社「スタジオドラゴン」の2番目の大株主でもあるが、Netflix側に不利な資本提携だったにも関わらず、株主になることを選んだ。2020年1月の決算発表でも、同社のテッド・サランドスCCO(最高コンテンツ責任者)は「韓国制作者のレベルの高いコンテンツが途方もない影響を作り出すだろう」と話し、株主に宛てた文書では「Made in Korea作品に投資し続ける」と書いたほど、韓国ドラマに熱を入れているようだ。
韓国ドラマは、Netflixの配信を前提にしているからこそ、海外ドラマと競争しても負けない面白いドラマを多く制作できた。豊富な資金力を背景に、今後も第2、第3の『愛の不時着』が生まれるのは時間の問題かもしれない。
【趙章恩】
ソウル在住ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。