「頼りない杏の表情がキリッと変わる瞬間です」(柴門さん)コミックス4巻より
◆主人公は本当は2人だった!?
そうして生まれたのが、夫・慎吾に不倫され、不倫相手の夫だった斉木と恋に落ちる「杏」、エリート弁護士を夫に持ちセレブ妻として暮らしながら落語家・丸太郎に惹かれる「まり」、専業主夫の夫・シゲオと息子がいても12才年下の部下・赤坂と情欲的な恋を楽しむ「優子」という3人の恋する母だ。
「いちばん最初に思いついたのは杏です。現実的な話、不倫する女性よりもされる女性の方がリアルだし、お姑さんとのつきあい方にも苦労したり、息子との距離感に悩んだり、共感を得やすいのかなと。でも女性ってそれだけじゃない。対極的な性格で、生き方をしているまりは破天荒そうに見えて実は真面目。反感を買う一面もあるけど、どこかその思い切った生き方に憧れを抱く女性です。
その2人を主人公に、と考えていましたが、いまの時代、バリバリ働く女性がいないのは不自然。それと、母性についても“母親ならあって当然”と思われがちだけど、そうじゃない人だってたくさんいます。母性の乏しさに悩み、性欲の強さに振り回される(笑い)、パワフルな女として生まれたのが優子です」
連載開始の前年(2016年)には、ベッキー(36才)の“ゲス不倫”が世間を賑わせ、以降も芸能界の不倫報道はお祭り騒ぎ。『恋する母たち』は、そうした不倫を肯定するのかという読者からの反響もあった。
「私は基本的に不倫はしない方がいいと思ってます。リスクが高すぎるし、失うものが大きすぎる。現実に相談されたら、“それはホルモンの影響で浮かれてるだけだから、落ち着いて”と止めますよ(笑い)」
【プロフィール】
柴門ふみ/1957年徳島県生まれ。1979年デビュー。代表作に『東京ラブストーリー』『同・級・生』『あすなろ白書』(いずれも小学館)など。数々の名作はドラマ化も多数。『老いては夫を従え』(小学館)などエッセイにもファンは多い。
※女性セブン2020年7月30日・8月6日号