Jリーグが一斉導入した「Remote Cheerer」
冒頭で述べたように、日本でもすでに無観客試合に「歓声」を入れる形での対応を進めている。
Jリーグでは無観客試合を「リモートマッチ」と呼称し、前向きな対応に努めてきた。その中でも、評価が高かったのが、ヤマハが開発した「Remote Cheerer powered by SoundUD」だ。J1・J2・J3の26クラブが導入している。スマートフォン専用サイトが試合ごとに用意され、試合展開に合わせて「応援ボタン」が入れ替わっていく。そして、「応援ボタン」をタップした人数に応じて、スタジアム内に設置したスピーカーから歓声や拍手の音を流すことができるシステムだ。
一般的な無観客試合対応は「テレビや動画配信で視聴している人に臨場感を与える」ことが目的であり、一種のファンサービス的な意味合いが強い。スタジアム内のスピーカーで歓声を流す、という行為ももちろん行われているが、システム導入のコストや「歓声を送った人」と現地の間のタイムラグの問題もあり、実際のスタジアムの歓声とは大きく異なる、という点も懸念されている。Jリーグでの導入についても初期には懸念する声もあったし、実際「歓声が不自然に途切れる」「突然大音量で流れる」など、本物の歓声とは違うという評価もある。だが、「Remote Cheerer」は2020年秋のサービス開始を目標に順調な開発が進んでいたもので、他の方式よりも素早く導入が可能であったこと、もともとコンサートなどでの利用も想定しており、遅延の問題も比較的少ないこと、リーグ開幕前の実証実験で選手側からもサポーター側からもポジティブな利用結果が得られたことなどから、7月のJ1リーグ再開時にも導入されている。Jリーグは全試合の配信権を持つ「DAZN」との連携し、リモートマッチを盛り上げるべく努力している。
ソフトバンクは「ロボット軍団」で応援
プロ野球も同じように、無観客試合へのテクノロジー導入を進めている。中でも注目されたのは、ソフトバンクが繰り出した「ロボット応援団」だろう。
6月18日に福岡PayPayドームで開催された福岡ソフトバンクホークスの試合では、ライトスタンド側に複数の人型ロボット「Pepper」が配置され、応援する様子が試合中継で流された。7月 7日から31日までは、Pepperに加え、四足歩行型ロボット「Spot」も配置される。Spotは米Boston Dynamics社が開発・販売するロボットで、非常に機敏かつ軽快な動きをすることが特徴だ。20体のPepperと20体のSpotが動く様子は、動画でも配信され、SNSなどでも数多くシェアされていた。
これそのものは、どちらかと言えば「応援の代替をすることで、ソフトバンクのプロモーションに役立てる」という方向性の施策だが、7回裏の攻撃の前に「応援する」という、ホームゲームを盛り上げる仕組みの代替としては、確かに面白い方策と言えるだろう。そして日本の場合、すぐにできるのは、ロボットビジネスを傘下に抱えるソフトバンクくらいなのも事実だ。