国際情報

【アメリカ発】コロナ禍で「脱中国」はどこまで進むか

内憂外患の習近平体制(Avalon/時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの発生源となった中国では、その後いち早く感染症の危機から脱し、経済回復を急いでいる。日本では中国経済のV字回復を予測するアナリストも多いなか、政治経済、国際問題に詳しいジャーナリストPeter Skurkiss氏は、アフター・コロナの世界では中国の凋落は避けられないと分析する。

 * * *
 コロナ禍のなかで、重要な製造業の多くが中国に集中していることの愚かさに気づいた国はアメリカだけではない。日本もそのひとつだ。3月初め、安倍晋三首相は日本の主要経済人を集めた会議で、サプライチェーンの混乱を避けるために、日本は中国への依存を減らすべきだと提案した。首相は「一つの国に生産を大きく依存している製品のうち、付加価値の高いものは日本に移転すべきだ。それ以外は、ASEAN(東南アジア諸国連合)など、生産拠点を多角化しなければならない」と述べた。

 安倍首相の発言はすぐに実行に移された。日本政府は4月7日に閣議決定した緊急経済対策で、コロナ問題で打撃を受けたサプライチェーンの海外移転や東南アジアへの拠点分散を支援するため、2400億円超の予算を計上したのである。

 この動きは中国を非常に不安にさせた。上記の日本政府の決定の翌日、中国共産党の最高意思決定機関である政治局常務委員会が北京で開かれた。習近平国家主席は、経済活動の回復については長期戦に備えなければならないと述べた。世界最大の経済大国と世界第3位の経済大国であるアメリカと日本が、中国から生産拠点を移転する動きを実際に進めていることのインパクトは大きい。これは中国の世界戦略を狂わせ、最終的には中国共産党の国内支配を弱体化させるだろう。上記の発言からも、習主席はそれを十分にわかっている。

「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」のコラムでCary Huang氏は、「世界は、重要な医薬品の生産を中国に依存することのリスクに目覚めつつある」と指摘している。同コラムでは、コロナ問題によって、欧米や日本の指導者たちは、単に重要な物資を一国に依存するリスクではなく、それを「国家戦略上のライバル」である国に依存することの大きな問題に気づいたとしている。経済学的なリスク管理だけでなく、国家安全保障や地政学的なリスクも考慮して、日米欧の脱・中国依存が加速することになるのだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン