「愛されオバさん」の模範例?(時事通信フォト)
「ステイホーム」「ソーシャルディスタンス」と、強い主張をしつつも、言葉尻は常にどこかやわらかく、相手の下手に出て、美意識も忘れない。
都庁内部からは、「石原都政時代より恐ろしい。決して異論を認めない」という声もあり、いつ“上沼化”するかはわからない。しかし、現時点では、「愛されオバさん」の模範例だといえそうだ。
そしてもし“愛されオバさん”になりたいなら、「目指すべきは“美魔女”ではない」と、前出の和田秀樹さんは言う。
「若い頃の体形を維持しようとダイエットに励むと、セロトニンが減少することがわかっているからです。“年を取っても美しさを保っていれば大切にされる”というのは幻想です。“もう若くないから”と自分を卑下したり、反対に“女性を尊重しない世の中や男性が悪い”などと決めつけないこと。充分な栄養を摂り、笑顔を絶やさないことで、人にも自分にも優しくなれるし、人に愛される女性になれるのです」
もちろん、優しくあることと、すべてを受け入れて許すことは異なる。横浜国立大学教授で社会学者の江原由美子さんはこう語る。
「日本に限らず、女性の不幸なところは、年齢的に成熟していくときに、いい“お手本”があまりないところです。せいぜい主婦のモデルとしての“上品な奥さま”という理想形くらいしかない。社会に出て男性と肩を並べて生きている女性や、ハッキリした主張を持っている女性は、どうしても“できる女=冷たい女、かわいげがない、怖い”という印象を持たれてしまいがちです。
アメリカ史上初めて女性で主要政党の指名大統領候補となったヒラリー・クリントン氏(72才)も、“冷たい女”という印象が拭えず、2016年の大統領選挙でトランプに負けてしまいました」
男性であるトランプ大統領は、相手を罵ることで「力強い」と評価され、女性のクリントン氏は、口調が強くなっただけで「冷たい」という評価を受けた。
「しかしいまの日本を支えているのは女性です。主婦も家事をやりながら働けといわれ、おまけに介護もある。日本の女性は、もっと自信を持っていいし、もっと主張していい」
女性は「嫌われオバさん」と「愛されオバさん」に分かれているのではない。がまんを強いられた結果、爆発させてしまったか、うまく吐き出すことができたかの違いでしかない。うまく吐き出す術を身につけられれば、「嫌われオバさん」になる道は回避できる。かつての上沼恵美子がそうであったように。
※女性セブン2020年9月3日号