治療により肺機能が回復した有村さんは、T病院に戻された。そこで記憶が戻った有村さんにとって、むしろここからが苦しい日々の始まりだった。
「チューブを挿入していた喉の穴がまだふさがっていないから喋れないし、寝ている間に点滴などの管を抜いてしまわないように、両手はベッドに縛られたままでした」(有村さん)
ECMO治療中、うつ伏せだったためか、全身が痛んだ。
「ここが痛いとか、苦しいとか、看護師や医師とのやり取りは全て筆談でした。縛った紐が解かれるのはその時だけで、排泄の世話や着替えも看護師さんに手伝ってもらう。筆談では伝わりにくいこともあるから、こちらもイライラしてスタッフに当たってしまうこともありました」
これからの生活が不安
現在はリハビリのため入院している有村さんだが、取材の間、乾いた咳をする場面もあった。
「苦しくはないけど、姿勢とか湿度の関係で咳がなかなか治まりません。感染する前はヘビースモーカーでしたが、今後は酒もたばこもやめないといけませんね」
そう言いながらお茶で喉を湿らせ、言葉を続けた。