コンビニの雑誌棚には、様々な種類の雑誌が並ぶ(AFP=時事)

コンビニの雑誌棚では区切られたスペースに陳列される成人向け雑誌(AFP=時事)

 悪い本とはどういうことか、私はもちろん察しがついたので言葉を選んで問い返すと、ホアさんもうなずく。要するに成人雑誌のことだ。昨年、コンビニから成人向け雑誌が原則、配置されなくなることがニュースになったが、加盟店の判断で今も1000店以上のコンビニで販売が続いている。そのコンビニの成人雑誌をおじさんがレジでホアさんに見せつけるように買うのだという。まあコンビニで正規に売っているわけで買うことに何の問題もないのだが、ホアさんによればあれはわざとだと言う。実際、立ち読みできないようにしているテープを剥がしてこれみよがしにあられもない見開きのままレジに出したりしたという。それも1度や2度ではないし、明らかにホアさんを選んで来ていることは当時の同僚も心配してくれていた。そんな嫌がらせも日本人店員なら気にしないかもしれないが、キスシーンすら手で顔を覆ってしまうというベトナム人の女の子からすればテロ行為である。

「日本だから仕方ないです。でも恥ずかしいです、ベトナムそういうのないです」

 ベトナムは性表現にとてつもなく厳しい。文化的にも思想的にもコンテンツとして性的なものはご法度、水着グラビアが関の山である。日本で売っているような成人雑誌はベトナムなら間違いなく罰金刑、下手すると公安に拘束される。ホアさんも年ごろの女の子、興味がないわけではないが、そういうことは好きな人とするものだと言う。ホアさんのバイトしていたコンビニは都内でも城東エリア、その手の本が充実している店はまだ多い。ホアさんの言葉をそのまま受け取るなら、おじさんはとんでもないセクハラ男である。店は守ってくれなかったのか。

「日本では悪いことじゃないです。お客さま神さまです。だから私が辞めました。怖いのは私だけだから」

 詳しい経緯は話してくれなかったが、結局その男から逃れるには店を辞めるしかなかったのだろう。客を出禁にしてまで守る店もあるが、大半はのらりくらり、本部も含めてよほどの犯罪行為でもない限り対処しないのが現実だ。言い方はあれだが店長や責任者の当たり外れという部分もある。はっきり言っておじさんの行為はストーカーそのものだが、警察が動くほどの法には触れていない。ホアさんは辞めて逃げるしかなかったということか。実はこの取材、最初はコンビニで働く外国人留学生の取材の一環だったが、モンスター客による女性店員の事件化されない日常の被害についての話に変わってしまった経緯がある。

「日本にいるから日本に従います。あたりまえのこと」

 外国人留学生のほとんどは礼儀正しく真面目な子たちだ。そもそも日本で凶悪犯罪に手を染める外国人はごくわずかで総検挙人員の2%前後、これはほぼ横ばいで変わりがない。ましてこれは日本人には適用されない入管法違反(特別法犯の約8割)も含めての話である。

「いつかベトナム人にもっと日本のアニメ見せたいです。ベトナムも作ることできます」

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト