とくに注目されているひとりが、今回が朝ドラ初出演にあたるロックバンド・RADWIMPSのボーカリスト・野田洋次郎。野田は、「酒は涙か溜息か」などを手がけた昭和を代表する作曲家・古賀政男をモデルとした木枯正人役を演じている。劇中には弾き語りするシーンもあり、さらにRADWIMPSが音楽を手がけた大ヒット映画『君の名は。』を彷彿させる「君の名前は?」というセリフも話題になった。普段はロックバンドで活動する野田が昭和歌謡を弾き語る貴重さがファンを喜ばせているようだ。

 とはいえ、現時点で『エール』で描かれているのは、まだ主人公が作曲家として若手の時代だ。劇中で古山夫妻がさらに深く音楽業界に関わっていくにつれて、また新たな音楽家と、その楽曲が次々登場することだろう。

 木俣氏は、他にも『エール』の見どころを挙げる。

「モデルの古関夫妻の史実と、創作部分の違いも話題のひとつ。どこが史実でどこが創作かを照らし合わせるマニアックな見方をする人もいます。放送再開後、時代は戦争へと進みます。自由に音楽を楽しめない状況下、音楽をこよなく愛する人々がどうなっていくか話題は尽きないでしょう」(木俣氏)

 もしかすると、“自由に音楽を楽しめない状況下”という意味では、コロナ禍の現在も通じるものがあるかもしれない。配信などで新しいライブの在り方を模索してはいるものの、多くのライブハウスが閉店に追い込まれ、音楽業界は未だ厳しい状況が続いている。そんな時代の中で、『エール』が人々に“音楽の力”を改めて感じさせてくれることに期待したい。

●取材・文/原田イチボ(HEW)

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