「ジョブ型」導入を阻止する幾重もの壁
今回の「ジョブ型」の前にも、社会システムの厚い壁が幾重にも立ちはだかっている。
第1にあげられるのは、労働市場の壁である。一人ひとりの職務(ジョブ)内容を明確に定義して契約する欧米企業では、その職務をこなせなくなったり、必要がなくなったりしたら最終的には解雇される。
例え解雇されても外部労働市場が発達している欧米では、他の勤め先を比較的見つけやすい。それに対してわが国では労働市場が未発達なので、解雇されたら満足できる就職先を見つけることが難しい。しかもわが国ではいわゆる「解雇権濫用の法理」によって雇用が厚く保障されているので、その職務が不要になったからといって直ちに解雇することはできない。
第2は、年功序列という慣行の壁である。年功序列を基本にしたわが国の雇用慣行のもとでは、年齢・勤続とともに給与も職位も上がることが期待されている。
一方「ジョブ型」の下では同じ仕事を続けている限り、給料もポストも上げる理由がない。経験を積み、年齢が上がったから昇給や昇進をさせるというわけにはいかないのである。果たしてそれを日本人、日本社会が受け入れるだろうか?