充電不安も吹き飛ぶ驚愕の航続距離とクルーズ感
さて、ドライブの様子をもう少し細かくレポートしてみよう。東京・青山で試乗車を借りた後、しばらく所用のため都内を走った後、まずは玉川のCHAdeMO急速充電器で充電率を90%とし、第1の目的地点である名古屋・名城公園のテスラチャージャーに向かった。
沼津までは箱根新道など一般道を通ったが、その箱根新道でさっそく驚きを覚えたのが、前述のハンドリングの良さだった。
中腹には180度ターンのようなコーナリングが連続するところがあるが、パワーオフでブレーキをかけながら進入し、コーナーを5分の1ほど回ったところでアクセルペダルを踏んでやると、前外側のサスペンションが沈み込んでしっかり踏ん張りを出しながら、内側のリフトアップはごく小さく安定した姿勢で綺麗な放物線を描くようにコーナーを抜ける。一見何の変哲もないセダンでありながら、いっぱしのハイパフォーマンスカーのような動きなのだ。
テスラが本格的な量産車「モデルS」を世に送り出したのは2012年のこと。それからたった8年だが、もうこんな味を作り出していることに驚愕を覚えずにはいられなかった。
沼津からは新東名を走行。途中、制限速度120km/h区間のある高速路線で、そこを終始優速な流れに乗って走った。GPS計測によれば、メーター読み120km/h時のスピードは118km/hと、かなり精度が高い。これは日本ブランドを含むアメリカモデルに共通する特徴だ。
その120km/h区間だが、クルーズ感は気持ち良いの一言だった。新東名は2012年開通という新線で路面状況はおおむね良好だが、トラックの通行量が多いために早くも路面のうねりがやや大きい箇所が増えつつある。そんなところでもモデル3はぐらついたり進路を乱されたりすることなく、悠然とクルーズした。
この傾向は路面の荒れた他の高速道路でも基本的に変わりはなかった。ただし、荒れた区間での滑走感は昨年乗った左ハンドルモデルより若干落ちる。左ハンドルのタイヤがコンチネンタル「ProContact RX」であったのに対し、右ハンドルはハンコック「VENTUS S1 EVO3」。このタイヤはグリップやコーナリング時のねじれフィールは非常に優秀だった半面、タイヤ側壁のしなやかさではコンチネンタルに劣る感があった。と言っても基本的には快適で、忌避するほどのものでもなかった。
大容量バッテリーと高速走行でも予想より良好な電力消費率の合わせ技で、370km走行後、名古屋城付近ある名城公園の充電スポットに電池残量15%、残り航続80km弱と、十分に余裕を持って滑り込めた。
日本のCHAdeMO急速充電器を大幅に上回る出力を持つテスラの急速充電器、テスラチャージャーは同社の売りのひとつ。接続後、どのくらいのペースで充電されるか観察してみたところ、おおむね最初の10分で130km、20分で240km、30分で320km、40分で370km、50分で400km…というところだった。
航続距離残400km台後半で出発した後、大阪、神戸などのスポットを飛ばして岡山の倉敷に残り100km強で到着。そこまでの走行距離は395.5km。「届くね~!!」というのが実感で、この時点で充電についての懸念はほとんど吹き飛んでいた。
倉敷、そしてフルスピードのスーパーチャージャーより若干スピードが遅い広島と短時間充電を行いながら、現時点では日本で最も西にある博多郊外のスーパーチャージャーに到着した。
そこから長崎の日本最西端、神崎鼻までは140kmほど。途中で充電残量が心もとなくなった時にはCHAdeMO急速充電器を使うこともでき、旅程の後半で複数の充電器を実際に試してみたところちゃんと使うことができたが、基本的には速いテスラチャージャーで充電しておき、途中はノー充電で走るのが快適だ。周遊の可能性も考え、念のため航続をプラス292kmの429kmまで回復させて出発した。それでも30分はかからないくらいである。