従来の評価項目が意味をなさない「楽しさ」
神崎鼻へは佐賀市回りの長崎自動車道ルートとハイクオリティな海産物で知られる糸島、陶磁器の産地伊万里回りの西九州自動車道ルートがあり、往路は西九州自動車道から。糸島に限らず、このあたりに点在する道の駅では極上の海産物が山のように売られ、食堂ではそれらを利用した魅力的なメニューが豊富に取り揃えられているのだが、コロナ禍の影響でどこも営業が縮小されており、それらを賞味する機会は得られなかった。
しかし、美味しいモノにはありつけなくとも景色は最高だ。西に走るにつれ、民家は少なくなっていく。半島というものはその果てに行くにつれて急速に最果て感が増していくのが常だが、空気感は場所によっていろいろ。筆者の出身地鹿児島の本土最南端、大隅半島の佐多岬に向かうのともまた一味違う感傷的な西の空気が漂っていた。
地図から受けるイメージより険しい内陸のワインディングロードを抜け、西海に面した神崎鼻へ出る。ちょうど西日のかかる時間帯だった。東京からの走行距離は1300km以上。そこまで充電時間のストレスや航続残の心配なしに、しかもドライブの楽しさをめいっぱい享受しながらたどり着くことができた。
テスラ車の楽しさは速い、静か、乗り心地が良いといった従来の評価項目をあまり意味のないものにするような性質のものだった。もちろん個別性能も優れているのだが、効率、ドライブフィール、マルチメディア、操作感などが混然一体となった新しさが源泉となったもので、実際にドライブしてみると既存のクルマとはかなり異なる商品であることが実感できる。
アメリカではプレミアムミッドサイズカテゴリーでBMW「3/4シリーズ」やメルセデスベンツ「Cクラス」を蹴散らして圧倒的なマーケットリーダーとなり、また欧州でも販売台数を大きく伸ばすなど破竹の勢いを見せているが、それもまたむべなるかなという印象だった。