いかにもシリコンバレー的な「煮詰め不足」も
さて、ここでモデル3のマイナス面についても触れておきたい。それはクルマの動的質感の高さや660万円のクルマの中では他の追随をまったく許さない加速性能(合法環境における0-100km/h加速の実測値4.2秒)といった車体、パワートレインではなく、市販車としての煮詰めの甘さが時折顔を出すことだった。
最も気になったのはクルーズコントロールの性能の低さ。道路のうねりが少し深めなところを通過するときや大型車を追い抜く時など、障害物があると誤認するのか、わりと頻繁に結構強めの自動ブレーキがかかる。
テスラといえばセミ自動運転「オートパイロット」がよく話題にのぼるが、日本の公道ではハンズオフ(手放し)の認可は受けていない。が、仮に認可を受けていたとしても、現状のレベルだとちょっと使う気にはならないかなというのが率直な印象だった。
ヘッドランプのハイ/ロー自動切換えの判断がまずいのもマイナスポイント。とくに先行車両の認識率が低く、ちょっとテールランプの照度が低いとかなり接近するまでハイビーム照射することになる。
カメラを通じたデータをビッグデータとして収集し、その国の道路に合わせて作動の適性化が図られている最中で、随時オンラインアップデートが図られるとのことだが、普通の自動車メーカーは実験段階でこれよりきっちり仕上げているのだから、言い訳としてはちょっと苦しい。
もう一点、これは停車中だったので大きな問題にはならなかったのだが、突然エアコンのブロワが最強になり、次の瞬間メーターなどが表示されるディスプレイが再起動するということがあった。再起動の時間は長くはなく、また走行に影響するものではなさそうだったが、自動車メーカーである以上、そういうバグフィックスは徹底的に行うべきだ。
これら、いかにもシリコンバレー的なバグや煮詰め不足があったがゆえに、インプレッションの冒頭であえて“青二才”と表現したのであるが、テスラとしてもそんなバグで評判を落としたくはないだろう。そのあたりのノウハウ蓄積や作り込みの徹底化は鋭意進めていくに違いない。
仮にそういう未熟さが解消し、またバッテリーや充電器、送電網などの技術革新によってEVであるがゆえのネガが克服されていった暁には、過去の成功体験がいつのまにか足かせになってクルマ作りやクルマのビジネスについて新発想を生み出せなくなっているレガシーメーカーは、果たしてテスラのような新興メーカーに対して優位性を保てるのか。よほど頭を切り替えない限り難しいのではないかと思った。