将来性を予感させる”偉大な青二才”
モデル3は2017年にアメリカで、2019年に日本でデリバリーが開始されたミッドサイズセダン。全長4.69m×全幅1.85mと、テスラのラインナップの中では目下、最もコンパクト。トヨタのミッドサイズセダン「カムリ」と比較すると幅はほぼ同じ、長さは20cmほど短いというディメンジョンで、日本の道路への適合性が比較的高いモデルと言える。
モデル3はテスラ車の中で最もコンパクトなサイズで、幅はトヨタ「カムリ」とほぼ同じ
日本でのグレード展開は上から「パフォーマンス」「ロングレンジAWD」「スタンダードプラス」の3種類で、今回乗ったのは中間グレードのロングレンジAWDで価格は660万円。総容量75kWhのバッテリーを積むタイプで、100%充電時の航続距離は560km。ドライブルートは東京~九州の周遊で、日本本土最西端、長崎の神崎鼻を目指して走ってみた。
リアトランクスペース。広大というほどではないが、十分なスペースだ
EVの特徴を生かし、フロントボンネットの下にもカーゴスペースが設けられている
さて、モデル3での長駆を終えての全体的なインプレッションだが、未成熟な部分が随所にみられるものの、大いなる将来性を予感させる“偉大な青二才”というもの。それがいかにもアメリカ西海岸企業らしいクールな雰囲気に仕立てられているというイメージだった。
ワインディングロードでの動きは重量級ボディをものともせず身軽
最も強烈な印象を残したのは意外なことに、ワインディングロードでのハンドリングを含めたドライビングプレジャーの高さというアナログ部分だ。筆者は過去、大小さまざまなモデルでロングドライブを行っているが、エンジン車、EV、FCEV(燃料電池車)といったパワートレインの区別を取り去って考えても、これほどまでにクルマを走らせることが楽しく、エキサイティングに感じられるモデルは滅多にあるものではない。
スーパーチャージャーでの充電は簡単。プラグを差し込むだけで充電操作から料金の決済までが自動的に完了する
それと並んで感心させられたのが、省エネルギー性が生む航続性能の高さと急速充電の受け入れの良さだ。ドライブ中はお試しということで広島で一度、余計に充電したが、基本的には東京からテスラスーパーチャージャーのある福岡・博多郊外まで愛知県の名古屋、岡山県の倉敷と、2度充電するだけで届いてしまう。もちろんその間は4、50分の足止めを食うが、ロングドライブにおいてはその程度のストップは誤差の範囲に感じられた。
そのドライブを支える操作系、およびエンターテインメントシステムは、デジタルネイティブ世代の若者をはじめITに慣れた人が喜びそうな仕立てだった。
不安になるほど何もない前席まわりだが、ボイスコマンド操作に慣れるにつれて不自由はなくなった
速度や航続距離残などの車両情報、カーナビ画面、エアコン、オーディオ情報その他もろもろが、すべてセンタークラスタ上方の15.1インチディスプレイに動的に表示される。昨年初めてモデル3の左ハンドル車に短時間乗った時は、スイッチがこれだけ少ないとかえって不便なのではないかと思ったりしたが、ロングドライブ中にクルマのことがだんだん分かってくると、スマートフォンの「OK Google」よろしく、ボイスコマンドでほとんどのことがやれてしまうことが分かってきた。
そしてパワフルな標準装備のオーディオ。テスラは設計協力メーカーのブランドを極力明らかにしない傾向があり、これもJBLなのかKRELLなのか、はたまたFOSTEXなのか定かではないが、とにかくクリアで音割れのない素晴らしいサウンドだった。システム出力は体感的には1000Wはあるだろうなという感じである。
Bluetooth接続されたオーディオ端末で自分の好きな曲をかけることもできるが、モデル3のエンターテインメントシステムには多数のインターネットラジオ局がプリセットされており、Smooth Jazzやローカル放送局などのチャネルを楽しんでいるうちに旅程を終えた感じで、持ち込み端末は結局使わなかった。
15インチディスプレイはカーナビを地図代わりに使う人にとっては嬉しい
インターネットラジオは豊富なチャンネルが用意されており、自分で音源を持ち込まなくても退屈せず