「テレビに救われたので、テレビとネットをすり合わせたい」
兼近:テレビのいいところってかなり多くの人が見ているってところです。テレビの話題を出せばなんとかなるんですよ。たとえば、天気の話題とかですね。全員が天気には興味あるし、皆さんの共通認識があります。
――あぁ、確かに。漫才をするにあたっても、天気や事件などテレビ関連の話題を出せば余計な説明をすることなく観客も分かってくれますもんね。
兼近:「この話をすれば全員が知っている」という話題は昔はあったでしょう。今はその力がテレビには完全にはないんだろうなというのは実感しています。全員が見ているものはない。ただし、それで終わるのかといったらそうではないとぼくは思っています。今、10代と20代がよく見るメディアはYouTubeとなっていますが、これはただの時代の変化でしかないのでは? テレビなかった時代は新聞を皆見ていたわけです。新聞の時代にテレビは重要ではなかったんです。だって、存在していないんですから。テレビが流行っていたといっても、「その時の流行りもの」ってだけです。
りんたろー。:ぼくもそこには同意しますね。いちいち「テレビの時代は終わった」だの言う必要はないと感じます。
兼近:そうなんですよ。ネットが出る前は、テレビが流行っていたってだけです。子供たちにとっての流行りものの歴史を考えたら、かつてケンダマ、コマが流行ったみたいなもの。だからこそ、ぼくはキャラ的に「今はYouTubeが最高でしょう! テレビってなんだよ!」と言うけどぼくらはテレビに救われた人間なので、テレビとネットをすり合わせたいと考えています。そのうえで、テレビを盛り上げたい気持ちがあります。そのために今は、テレビをあえて敵にしている面もあります。
――『ワイドナショー』(フジテレビ系)で松本人志さんに臆することなく意見を言い、さらには「先輩がいちいちドラゴンボールやプロレスに例えるのが分からない」と言ったりってこともありました。その後に実は兼近さんもドラゴンボール全巻持っていることを明かしたりして、あえてヒール的な立ち居振る舞いをしたということですね?
兼近:テレビを悪者にしてネットとの対立構造にすることで、次に若者と中高年が仲良くなるかもしれません。そうしたら、エンタメも社会も次のフェーズに進むことができるかもしれません。
■取材・文:中川淳一郎 撮影:森滝進