あさま山荘事件の行方を固唾を呑んで見守った秋吉久美子。自らの女優人生を振り返る自伝的著書『秋吉久美子 調書』(筑摩書房、共著・樋口尚文)を上梓

 理想と現実のギャップに打ちのめされた秋吉が痛感したのは、改めての「個」の認識だった。

「イデオロギーをかざす団体行動の先には、非常に危ないものがあると学びました。あさま山荘事件は青年の正義と憤りが、やがて追い詰められて内部紛争になったけれど、本来は孤独と向き合って、孤独に耐えるべきだった。私がリーダーだったら、仲間を投降させて、ひとりで責任を負うべきか? そうした難問を突きつける“感性の踏み絵”になりました」(秋吉)

 当時、彼らの価値観を揺るがす大事件がもう1つ起きている。昭和48年からのオイルショックだ。ライフシフト・ジャパン取締役CROの豊田義博さんが指摘する。

「昭和29年生まれが大学生になった頃に、オイルショックで日本中が揺れました。石油価格の高騰で高度成長がストップして、トイレットペーパーの買い占めが起きると、それまでのバラ色の状況が激変して、世の中の価値観が大きく変わりました。その点で、就職難に苦しんだ2000年代のロストジェネレーション(失われた世代)と29年生まれには似た面があります」

 ロスジェネ世代と大きく異なるのは、1980年代になってバブルが到来したことだ。

「マッチで〜す」、「キューちゃん!」──1981年に放送開始した『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)で、近藤真彦のものまねや、九官鳥のキューちゃん役で人気が爆発した片岡が「狂乱の1980年代」を振り返る。

「ぼくはバブルの始まりとともにテレビに出始めて、いちばんいい時代を享受していたと思います。テレビの収録が終わった後は毎夜六本木で遊び、タクシー券も使い放題。20代後半から30代前半という、エネルギーもあって働きざかりの頃にバブルを経験したから、上の世代のようにのめり込んで投資をして失敗することもなく、下の世代のように訳もわからず踊らされるということもなかった」(片岡)

 ファッションジャーナリストの藤岡篤子さんは「バブルを経験したこの世代は“ゴーイングマイウエー精神”が染みついている」と語る。

「若くして1980年代を通過した世代はほとんど無敵です。海外旅行も流行し、一般の人がブランド品を購入できるハードルがぐんと下がった時代で、一流のものに囲まれてどんどん自信と自己肯定力が芽生えていった。その結果、29年生まれは、空気を読まず忖度をしなくて、自分が感じたことを行動や言葉で表現するようになりました。良くも悪くも行動や発言が『ゴーイングマイウエー』になったんです」(藤岡さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン