国内

昭和世代、コミュニケーションハラスメントにビクビク?

昭和世代が悩みがちなオンラインコミュニケーション

昭和世代が悩みがちなオンラインコミュニケーション

 作家の甘糟りり子氏が、「ハラスメント社会」について考察するシリーズ。今回は、今の時代のコミュニケーションツールに対する正直な思いを吐露。

 * * *
 LINEで仕事を依頼するのは非常識。

 ほんの一、二年前までは私もそんなふうに思っていた。LINEは友達とプライベートなやり取りをするもので、仕事の発注ならパソコンで使うメールアドレスにするべき、なんてね。

 今時、そんなことをいっていたら成り立たない。たいていのことはスマホの中で起こり処理されていく世の中で、ツールの種類に礼儀を求めている場合ではないのだ。私のようなフリーの出入り業者は、相手に合わせて、いかに早く、いかにお互いのストレスがなくやり取りをできるかを優先しなければならない。そう、早さ。今の世の中、返信が遅いだけでイラッとされる。イラッとされるだけではなく、できないやつと決めつけられたりもする。

 先日、ある仕事関係者から電話がかかってきた。いきなり電話とは何事かと思ったら、

「メールした件のお返事、そろそろよろしいですか?」

 えっ、メール? 覚えがない。

 あせってスマホをいじってみたら、二日前に携帯電話のキャリアのメールアドレスへ送られてきたものだった。なんでも、急ぎだったからパソコンではなく携帯のメールに連絡をしたのだという。脱力してしまった。もはやキャリアのメアドに送られてくるのは「データ容量に関するお知らせ」くらいなので、ほとんど開かない。今時、携帯キャリアのメールなんか使わないでしょ、と思ったけれど、それがLINEは使わず、SNSを一切やらないその人のスタンダードなのだろう。

 LINE、それからFacebookに連動している「メッセンジャー」、電話番号がわかれば送れる「メッセージ」は着信があればスマホの画面に通知が出るように設定してある。インスタやツイッターではほぼ毎日何かしらの発信をするように心がけているので、日に何度か開く。だから、他にはパソコンのアドレスのメールをちょいちょい確認していれば連絡漏れはないと思っていた。甘かった。キャリアにアドレスが残っている以上、そこにも連絡があるかもしれないのだ。

 連絡ツールの多様化は便利ではあるけれど、それなりの時間とエネルギーを奪われる。

 パソコンのメールで原稿を送った後、念のためにLINEで「今、原稿を送りました」と知らせる場合も少なくない。相手がスマホ中心だとパソコンのメールは後回しになってしまうし、人によってはメールが多くて見落とすかもしれないからだ。しかし、すぐに相手からも「メールに返信しました」とわざわざLINEが来たりすると、何だか徒労をしている気になる。最初から原稿をLINEで送ればいいのだけれど、それは失礼な気がしてしまうのだ。

「既読」というシステムにも振り回されている。既読した以上、早く返事をしなくてはと勝手にプレッシャーを感じるし、こちらが送ったものが既読になっても返信がこないとやはり気になる。「既読で返信しないのは了解、OKという意思表示」という同世代の友人もいるけれど、私はそこまで強気になれない。

 ズレていると思われたくない。世の中の流れに乗れていない、遅れている、と思われるのが怖いのだ。これって、私たちバブル世代にはありがちではないだろうか。「自分たちこそが世の中のセンター」という気分がなかなか抜けない我々は、いざセンターでなくなっても、なんとかその近くにいようともがくのである。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン