日本の観光業を変えるきっかけにもなりそうな、ずらし旅とは具体的にどんなものなのか。JR東海の特設サイトには、その道の“達人”が勧める具体的な旅行プランがいくつも紹介されている。

 たとえば、近年は訪日外国人客でごった返していた京都。京都市観光政策監の糟谷範子氏は、〈本当の京都を知るなら朝と夜〉と題して、知恩院や大徳寺、南禅寺などの有名寺院に行くなら通常9時〜17時の拝観時間よりも前、早朝5時(冬は6時)からの“開門”に合わせて訪れることを勧めている。糟谷氏はこう綴っている。

〈朝は思い思いに散歩を楽しむ地元の人々の姿や、境内をきちっとお掃除されるお坊さんといったお寺さんの“顔”が見られる。お寺の建物の中に入る「拝観」ができなくても、京都人の暮らしを間近に感じることができる〉

 また、グルメタクシードライバーの岩間孝志氏は、〈京都では昼におやつ 3時にごはん〉と題し、タクシー業界では当たり前という「時間ずらし」の食事スタイルを提案する。

〈僕らが昼食を取るときは観光客で混んでいる時間帯は外しますし、それに昼時はクルマの渋滞がなくなるので、その間に、例えば大原や嵐山みたいな、混んでいると1時間かかるところに30分で移動して時短できるんですよ。全体の行程を効率化するこの考え方って、withコロナ時代の「三密を避ける」テクニックにそのまま応用ができると思います〉

 岩間氏のテクニックを使えば、お昼時には“売り切れ終了必至”のスイーツを味わい、おやつの時間に人気のランチをゆったり楽しむことができるという。京都の他にも、江戸時代の歴史的建造物が並ぶ「飛騨高山」の町並を「夜歩き」して楽しんだり、「富士山」の絶景スポットを自分で探したりする旅行術が同サイトには紹介されている。どれも、定番から外すことで発見できる、旅の新しい楽しみを提案するものだ。

 他にも、旅行会社各社は3密対策を徹底した旅行プランを売り出している。

大浴場やプールの混雑状況がひと目でわかる(提供・星野リゾート)

 例えばHISは、「3密対策! あんしん旅 北海道」と題した特別プランをスカイマーク、星野リゾートと合同で企画。フライトでは3席並びのシートをグループ1〜2名で利用でき(4名の場合は2列6席分)、別グループとの密接が避けられるという。

 同プランの滞在先となる「星野リゾート トマム」では、チェックイン時の検温に始まる衛生管理が徹底されているほか、施設内に複数あるレストランの混雑状況を管理して、入店時間の分散化を実施するなど「ずらす」ことで3密対策を徹底している。朝・夕食はレストランからテイクアウトもでき、客室などでの食事も可能だ。さらに、施設内のプールや大浴場では、スマートフォンで混雑状況がわかる「3密の見える化」サービスも行っている。

 国内外45施設を運営する星野リゾートだが、他施設でも同様の3密対策を徹底している。客室でのチェックイン(フロントで不特定多数との接触を避ける目的)のほか、アクリル板や手袋着用による衛生管理・入店制限による3密対策を徹底した「新ノーマルビュッフェ」は特に好評だという。

 個人・グループで参加するバス旅行を手掛けるクラブツーリズムでは、「ニュースタイル」としてバスの座席を1人2座席分の利用とし、1台19人以下で運行するプランを実施している。従来よりも行程に時間をかけ、車内換気や途中休憩を多くしているという。食事場面でも、グループごとの間隔を開けるなど工夫。同プランの参加者からは「手指の消毒や、距離確保など、くり返しご案内いただけて良かったです」「食事会場は、衝立やアクリルパネルで仕切られていて、安心でした」といった声が寄せられているという。

 JTBでは、全席皮張りリクライニングシートを贅沢に10席配した大型ラグジュアリーバスを、5名限定で運行する豪華プランを販売中(最小催行人数3名)。宿泊先も離れやヴィラが中心で、3密対策が徹底された高級旅館ばかりだという。

窓側の席のみを使用して客同士の距離を確保した19人以下のバスツアーを実施(提供・クラブツーリズム)

スペースたっぷりの大型ラグジュアリーバスを、5名以内限定で使う豪華プランも(提供・JTB)

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