同様にブラジル・サンパウロ大学の研究者らが9万人以上の新型コロナ感染者に行った調査でも、インフルエンザの予防接種を受けた人は、受けていない人よりも集中治療室への入院リスクが8%低く、死亡リスクも17%低かった。
「いずれの研究でも、ワクチン接種者の新型コロナによる死亡率が下がりました。もちろんインフルエンザウイルスと、新型コロナウイルスは別種のウイルスです。原則的には、インフルエンザのワクチンでは、新型コロナは防げないはずです。
ただし、さまざまな研究結果を総合的に判断すると、ワクチンが免疫力全体を活性化させてインフルエンザだけではなく、新型コロナへの防御力を高めた可能性は充分にあります。それらの研究から、新型コロナ予防のためのインフルエンザワクチンの活用に注目が集まっています」(上さん)
インフルエンザだけでなく、ほかのワクチンが新型コロナに有効との研究結果もある。
「最近のギリシャの研究結果では、BCGワクチンを接種した人は新型コロナ感染症の発症率が45%減少しました。またメキシコの研究では、麻疹、風疹、おたふく風邪のMMRワクチンを接種した人は、新型コロナに感染しても軽症ですむ割合が高かった」(上さん)
そもそもインフルエンザは国内で年1000万人が罹患し、ピーク時は1日約30万人が診断される。直接または間接的に1万人が亡くなるとされ、新型コロナの死者数よりはるかに多い恐ろしいウイルスともいえる。
インフルエンザと新型コロナの同時感染という恐怖もある。新型コロナの初期の流行中心地だった中国・武漢では今年1~2月に新型コロナに感染した95人中46人がインフルエンザにも感染していたという。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが指摘する。
「その研究報告によれば、同時感染した患者はサイトカインストーム(免疫の暴走)によって心臓に損傷を起こしやすく、重症化リスクが高いとされます。日本でもこの冬の同時感染に注意が必要です」
事実、世界保健機関(WHO)はインフルエンザと新型コロナの同時流行を警告し、インフルエンザの予防接種を受けるよう推奨している。日本でも東京で65才以上が無償になるなど、各地の自治体は助成を拡大して予防接種を促進する。
※女性セブン2020年10月15日号