治部:問題が発見されないっていうことですよね。今、コロナ禍の影響で若年女性の自殺が増えていると言われていますが、LGBTはどうですか?
村木:若いLGBTの人で、学校も行けない、バイトにも行けないっていう人が、理解のない親とずっと家にいてしんどい思いをしているという話を聞いています。オンラインでイベントをするときも、親と同居だと参加できなかったりして、LGBTの仲間とのつながりが断たれ、孤立感を深めている人もいます。ひとつ希望が持てるのは、身近な人が理解してくれると随分楽になるということがデータで示されているので、やはり、親になる方が子育ての最初にLGBTのことを学んでほしい、子育てするうえでの基本教養になってほしいと思っています。そういう気持ちで「にじいろ子育て手帳」という冊子も作っています。
治部:使いたい人は結構いると思います。やっぱり、ツールがあると理解しやすいですよね。私も千葉県の教職員組合のジェンダー関連の授業の研究発表会のコメンテーターみたいな仕事をやっているんですが、既に県内小学校で、同性同士のペンギンの絵本を子どもと先生が読んで話し合うといった授業を行なっているところもあります。実は女性の話をするより、LGBTの話のほうが割と抵抗なく、「そうだね」って言ってくれる人が多いんです。女性の話は、中高年男性にとっては「俺、責められてる?」みたいに受け止められることも多くて。
村木:なるほど。ジェンダー格差の話は実はLGBTの中にもあって、女性カップルは男性カップルに比べて収入が低いというデータがあります。それは世の中のジェンダー格差を反映しているんですね。そういうこともあって、やはりLGBTだけでなくジェンダーイクオリティもやらなくてはいけないと思っています。
治部:私が気になっていて村木さんにお伺いしたいと思っていたのは、SNSとかでトランス女性が女子トイレを使うべきじゃないなど差別的な声が多くなっている問題。
村木:お茶の水女子大がトランス女性の受け入れを表明した後、あたかもトランス女性を性犯罪者であるかのように見なす発言をする人たちが増えてきました。そもそも、古い雑居ビルとか女子トイレすらないところもあって、女性が男性の後ろを申し訳なさそうに通って個室に入るような時代から、苦労して女子トイレを勝ち取ってきた、という話も関係しているのかもしれません。
治部:ジェンダーフリー・バッシングのときに出てきた、「男女が一緒に着替えるんだって?」みたいな話と似てるかな、と思って。一種の「藁人形たたき」みたいな。その時代の残り火のような……。