国内

自殺者の頭の中 ネガティブな感情で脳が疲弊し理性を失う

ネガティブな感情にとらわれ続けると、脳が疲弊して理性を失ってしまう

 三浦春馬さん(享年30)、芦名星さん(享年36)、竹内結子さん(享年40)……芸能界に相次いだ自殺の連鎖に、多くの人の心はざわめいたはずだ。たとえ「死にたい」という言葉を口にしても、実際には思い留まる人が大半だが、人が本当に自殺を“実行”してしまうとき、その人の頭の中では、何が起こっているのだろうか。精神科医の樺沢紫苑さんはいう。

「人は本当に追い込まれたとき、思考が狭くなり、“ゼロか100か”でしか物事を考えられなくなります。“もう、つらいから死のう”と、ほかの選択肢がなくなって死を選ぶ。異常な心理状態になっています」(樺沢さん)

 この心理状態にいたっているとき、その人の脳の中でも、ある変化が起こっているという。長い間ネガティブな感情にとらわれ続けていると、脳が疲弊して理性を失うのだ。脳科学者の杉浦理砂さんはいう。

「感情には、突発的な『情動』と、持続する『気持ち』の2種類があります。問題は、“悲しい”“怖い”といった気持ちが長く続くと、感情を司る扁桃体が過剰に活動するようになります。すると、扁桃体の活動を抑制していた前頭前野が疲弊して、感情の“ブレーキ”が効かなくなる。思考力や判断力、意欲や関心など、前頭前野の高度な機能が著しく低下することがわかっています。

 その結果、心の視野狭窄を示す『トンネルビジョン』という状態に陥り、客観的・多角的な視点や判断力が失われてひとりで抱え込みやすくなり、一度“死にたい”という気持ちになったら、死ぬことしか考えられなくなるのです」(杉浦さん)

 持続する“死にたい”という気持ちに、突発的な怒りやショックという情動が加わると、その勢いに任せて、自殺に踏み切ってしまうのだ。大分大学医学部精神神経医学講座教授の寺尾岳さんはいう。

「自殺を考えている人は、精神的な視野が狭くなって悲観的になり、“何をやってもダメで自分には生きていく価値がない”と思い込んでいます。

 あくまで想像するしかありませんが、自殺の直前には、誰かに頼ろうとする気力も失せ、孤独感が深まり、生きていくこと自体が苦しくてたまらなくなる。“一刻も早くこの苦しい状況から逃れたい”と切望した結果、そのために唯一できることは、“苦しんでいる自分自身を殺すこと”と、絶望的な気持ちになってしまうのではないでしょうか」(寺尾さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン