花の中3トリオとして活躍した山口百恵、森昌子、桜田淳子

 そう一気に語ると、少し遠くを見つめた。そして、山口百恵と過ごした8年間の記憶の中から、「今だから話せるのだけれど」と前置きをして、あるエピソードを語り始めた。

「先日、『中居正広のキンスマスペシャル』(TBS系)というテレビ番組に郷ひろみが出演して、『実は山口百恵さんのことが好きでした』と告白していました。でも自分はフラれてしまったのだと。その様子を自宅で見ていた私は、思わず『それは違うだろう』とつぶやいていたのです。

 当時、私は仕事で百恵さんと頻繁に会っていたのですが、あるとき、打ち合わせの席に『平凡』だったか『明星』だったか……アイドル雑誌が置いてあった。ふと見ると、彼女は郷ひろみの記事を実に熱心に読んでいたんです。こちらの視線に気づくと雑誌を閉じてしまったのですが。淡い恋だとはいえ、ふたりは相思相愛だったんじゃないかな。

 ところが、同世代の歌手が郷に熱を上げているのを知って、彼女は静かに身を引いた。山口百恵という人は、10代にして自分の気持ちをコントロールする術を知っていたのです。これは1つの脅威でしたね」

【プロフィール】
酒井政利(さかい・まさとし)/1935年、和歌山県生まれ。立教大学卒業後、松竹、日本コロムビアを経てCBS・ソニーに入社。プロデューサーとして南沙織、郷ひろみ、山口百恵、松田聖子など多くのスターを生み出す。『愛と死をみつめて』(1964年)、『魅せられて』(1979年)で日本レコード大賞を受賞するほか、受賞作多数。現在は、酒井プロデュースオフィス代表取締役として音楽プロデュース業のかたわら、次世代のプロデューサーの育成に励んでいる。

取材・文■丸山あかね

※女性セブン2020年11月19日号

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