つい応えてしまうサービス精神旺盛な人
音楽の才能に溢れ、プリンスと呼ばれる久志は、ミュージカルスターである山崎のイメージと重なる。だが、実は男ばかりの4兄弟の三男坊で、かなり男っぽい性格だと山崎は言う。
「『久志はふだんの山崎さんと同じですか』とよく聞かれるのですが、実は正反対。ぼくは2015年頃からテレビに出させてもらうようになったのですが、バラエティー番組などでは、必ず『ミュージカル風にターンしてから自己紹介してください』って、台本に書いてある。だから、毎回こんなふうに(と、ミュージカル風に片手を差し出し)自己紹介をしていたら、いつのまにか、ミュージカル界のプリンスみたいなイメージになっちゃったんです」
と、にっこり。求められると全力で応える。サービス精神旺盛な人だ。
山崎と音楽との出合いは幼少期にさかのぼる。歌がうまく、宝塚歌劇団に入ることが夢だった母の影響を受けて育った育三郎少年のまわりには、物心ついた頃から音楽が常に流れていた。
「子供の頃のぼくは、母の後ろに常に隠れているようなおとなしい子で、とにかく引っ込み思案だったんです。それが、幼稚園の頃に家族で見に行ったミュージカル『アニー』に衝撃を受けて、〝ぼくもやりたい〟と母に言ったら、母は驚いていましたが、会場でCDを買ってくれた。それを何度も聴いて、歌っていたんです。そんなぼくを見て“この子に歌をやらせたら、自信がつくかもしれない”と、小学3年生から歌のレッスンに通わせてくれるようになって……。
久志は、子供の頃に母親と離ればなれになり、教室で泣いているときに、藤堂先生(森山直太朗)から唱歌『故郷(ふるさと)』を教えてもらい、“君には歌があるんだ”と励まされて歌の道に進みますが、この場面と子供の頃の経験が重なって、久志の気持ちはよくわかりましたね」
小学生の頃は、地元のチームに所属し、全国大会を目指す野球少年でもあったが、1998年、12才のときに受けた小椋佳(76才)企画のアルゴミュージカル『フラワー』のオーディションで、3000人の中から主役に大抜擢される。この舞台をきっかけに、プロ野球選手ではなく、ミュージカル俳優になることを決意する。
◇山崎育三郎
1986年1月18日生まれ。東京都出身。2007年ミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役に抜擢され、注目を浴びる。2015年『下町ロケット』(TBS系)に出演し、テレビドラマの世界にも進出。連続テレビ小説『エール』の佐藤久志役で朝ドラ初出演。ドラマの共演をきっかけに生まれた森山直太朗(44才)作詞作曲のシングル『君に伝えたいこと』が12月2日リリースに。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2020年11月26日号