芸能

『危険なビーナス』吉高由里子と妻夫木聡が醸す文学的醍醐味

「いつも定時で帰るのに仕事ができて人望も厚い」東山結衣役の吉高由里子

謎めいた人妻を演じる吉高由里子

 マッチング、流行りの言葉だが作品における役者同士の関係においてもその良し悪しは歴然とするものだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 吉高由里子・妻夫木聡主演の『危険なビーナス』(TBS系日曜21時)は、本日15日放送の第6話を前に折り返し地点へ。視聴率は初回14.1%から第5話までずっと二桁をキープしています。さすが東野圭吾氏の同名小説が原作だけあって、謎解きの要素が多々仕込まれミステリアスな展開に惹かれる視聴者も多いはず。まずは「犯人は誰なのか」を考察する愉しみがありますが、加えて他の味わいも見逃せない。

 その一つが、役者の存在を味わうこと。特に、謎めいた女・楓。吉高由里子さんが演じる楓の存在を視聴者が素直に受け入れるかどうかで、このドラマを存分に楽しめるかどうかが決まる……くらい大きな役どころでしょう。

 矢神明人(染谷将太)の失踪事件をきっかけに「彼の妻」だとして現れた楓。明人と父親の違う兄、独身獣医の手島伯朗(妻夫木聡)は美人に弱い性格でもあり、楓と共に明人を捜し始める。失踪した明人は矢神家の血を引き30億円という巨額遺産の相続権を持っている。その遺産を巡って、次々に不可解な事件が発生し……吉高由里子さんが演じる楓は、クルクルと表情を変えていきます。

 クールな横顔で知的な戦略を立てる策士かと思いきや、天然ぼけのような風情を見せたり。ぽってりと丸い頬を膨らませ表情を歪めて崩してみたり。口をとがらし目玉はせわしなく動き、眉も上下する。その幼さを強調した表情の裏には、別の冷徹な顔もありそうです。

 口調も妙で、わざとかと思えるほど滑舌は良くなく、「お兄様」「叔母様」とやたら「様」が出てくるセリフは舌足らず、どこか甘えた風でもある。かん高い声ではしゃぐかと思えば、アルトの低い響きで事態を推理し次にとるべき戦術を伯朗にささやく。正体不明の楓。その散乱したイメージがドラマの味わいになっています。

 これはまさしく「狙った」役作り。いくら視聴者が目を凝らしても、どんな人なのか、なかなか焦点が合わない。楓というビーナスのイメージが乱反射すればするほど、謎もまた深まっていく。「楓に翻弄されたい」という潜在的な視聴者の願望を刺激して引っ張っていく。

 吉高さんは高校生の時にスカウトされて業界入りし「女優への憧れは全く無かった」と語る個性派。十代で主演した映画『蛇にピアス』では物怖じせずヌードになったりボディピアスに傾倒する女性を演じ切るなど、かなり度胸の据わった人だろうと想像できます。

関連記事

トピックス

石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン